曾子(そうし)曰く、吾(われ)、日に三たび吾(わ)が身を省(かえり)みる。人のために謀(はか)りて忠ならざるか、朋友(ほうゆう)と交(まじ)わりて信ならざるか、伝(つた)わりて習わざるか。 論語【学而篇】

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武本 重毅

日頃の頭のトレーニングにもなる。“三省”のすすめ
 曾子が、自分の修業上の工夫として、
「私は私自身の行動を、毎日何回も怠らず振り返って観察している。それは、人のために物事を考えて自分の努力に不足な点はなかったか、友人と交際して自分の言行に不誠実な点はなかったか、また先生から学んだことを放っておき復習しなかったことはなかったか、というようにである。
 このように日頃から観察反省して、忠実でなかったこと、あるいは信頼に応えなかったこと、またあるいは復習しなかったことがあったことと、必ず反省し矯正に努めた」
と言っている。
 セルフコントロールの工夫はまさにいたれり尽くせりといえる。

 この言葉どおり実行すれば、今後その過ちを再びしないように注意するし、行いを慎むうえに効果があるのはもちろんであるが、それと同時にその日その日のことが、一つひとつ記憶のうえに展開されてくるために、これを順序よく頭の中に並べて、一目で点検することができ、深い印象が頭に刻まれて自然に忘れられないようになり、記憶力を増強する効果もある。

(渋沢栄一「論語」の読み方、竹内均編・解説)

 あと一年と一ヶ月弱で還暦を迎えるいまになって、記憶力をどうやって保つことができるか気になっている。世間では、筋肉を鍛え、骨を強くし、健康寿命を伸ばそうというスローガンの下、皆が栄養に気をつけながら額に汗をしてトレーニングするようになったが、脳・神経系はどうであろうか。認知症高齢者の介護の大変さ、高齢者ドライバーの暴走など、実は脳トレーニングこそが必要であると皆気づき始めている。以前より、わたしの“はとこ”は高齢者が再び学校での授業を受け学習することで脳を再活性化できると考え、わたしの友人である理学療法士は身体だけではなく脳もトレーニングが必要であると提唱した。そしていま、それぞれの取組みにおいて認知症予防、早期認知障害予防への効果が認められるようになり、二人はそれぞれ独立して事業を始めている。それが「おとなの学校」と「Re学」である。二人ともいまや全国区の有名人となった。何よりも、その二人自身の脳が一番活性化されているように思う。

武本 重毅
武本 重毅
聚楽内科クリニックの院長、医学博士。