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院長日記

アミノインデックスという検査で認知症リスクをチェック 日経産業新聞 2019年10月17日付

武本 重毅

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 聚楽内科クリニックで採用している血液検査についての記事がのっていました。応用範囲を広げる試みに賛同します。

 

 血液などからがんなどのリスクを分析する技術は「リキッドバイオプシー」と呼ばれ、世界中で開発競争が繰り広げられている。
 味の素はアミノ酸に着目し、2011年に血液検査「アミノインデックス」を始めた。血液中の1グラムのアミノ酸から病気にかかるリスクを評価する。アミノインデックス事業部の森妹子部長は、「食品業界で日常的にアミノ酸の品質を研究してきた成果」と説明する。人体の約2割はたんぱく質で、20種類のアミノ酸がつらなって構成している。ほとんどのアミノ酸はたんぱく質として組織組成しており、血液中にあるアミノ酸はたった1グラムだ。味の素は、健康な人の血液中のアミノ酸のバランスが一定に保たれていることを早くから明らかにしていた。がんなどの病気になれば、体内のアミノ酸のバランスが崩れるメカニズムだ。
 例えば、正常な細胞と比較すると、急増殖するがん細胞はアミノ酸を多く消費することで代謝が変化する。また、腫瘍が大きくなる際にも、筋肉など他の組織からアミノ酸を奪う。味の素はこうした特徴や多様なパターンを解析した。疾患ごとにアミノ酸のバランスの変化を0から10で数値化することに成功した。7種類のがんに対して、約3000人の検体パターンを蓄積するなどして研究をスタートした。
 2011年のアミノインデックス発売時はがんをまず対象とし、17年に糖尿病、今年4月に脳卒中と心筋梗塞に範囲を広げている。10年以内に脳卒中と心筋梗塞を発症する可能性を分析する。
 アミノインデックスの料金は税別2万5000円前後で、利用者は5ミリリットルの血液を採取すれば済む。1回の採血で三大疾病を評価できるサービスとして、約1500の医療機関が導入している。
 2020年度にも認知症を対象に追加する計画だ。認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」のリスクが増す背景として、たんぱく質の摂取不足が関係していることが研究で分かっている。「認知機能の低下を早期に見つけ、食事や運動など改善方法の提案と組み合わせたサービスにする」(森氏)認知症は早期発見が難しい。アルツハイマー型認知症の原因物質とされるたんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」の蓄積を調べるには、1回で数十万円かかるPET検査がある。その他でも、脊髄液を取り出し検査するといった負担がかかる手法が主流だ。アミノインデックスはあくまでも病気の可能性を調べる手段のひとつだが、安価で調べられ、検査を受けるまでのハードルが低い。認知機能が回復できる軽度の段階で発見できれば、治療や予防への前進が期待される。
 栄養面でのサポートやサプリメントなど食事の改善提案など、得意分野でもある「食」への知見をフル活用したサービスに進化させていく。食の歴史と歩んできた味の素だからこその持ち味を発揮する。(薬袋大輝)

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武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。