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医学博士とシェフ/ソムリエの健康レシピ

ハーブを使った美味しい料理にワインを添えて病気の予防

<全12回>

第3回テーマ:

精神的ケア「不安・緊張」

    ハーブ:
    リンデン
    レシピ:
    リンデンのティー、リンデンを使ったフランス料理「10種の野菜と車海老のテリーヌ、リンデンの香り」
    おすすめワイン:
    キュヴェ・アナテーム・ブラン 2013 ドメーヌ・モン・ド・マリー

原因不明の「不安・緊張」への悩みに毎日の食生活からアプローチを

 もちろん不安を引き起こす疾患もありますので、そのような場合には原因である疾患の治療が最優先であり、これらを鑑別する必要があります。たとえば脳腫瘍、脳血管障害、パーキンソン病など中枢神経疾患、甲状腺疾患など内分泌疾患、そして膠原病などは重要です。しかしながら少子高齢化と格差が進む日本において、原因不明の「不安・緊張」に悩む若者、労働者、女性、高齢者は増えており、学校や職場、そして社会を活性化し元気にするために毎日の食生活からのアプローチは大切です。

 今回ご紹介するメディカルハーブはリンデンです。きっと悩んでいる皆さまのお役に立つはずです。

鎮静効果の高いハーブ:リンデン

    学名
    Tilia europaea(ティリア エウロパエア)
    和名
    セイヨウボタイジュ
    科名
    アオイ科(シナノキ科)*
    *アオイ科は新しい科名、シナノキ科はこれまで使われてきた科名
    使用部位
    花部(苞)、葉部
    花の色
    クリーム色
    主要成分
    フラボノイド配糖体(ルチン、ヒペロシド、ティリロシド)、アラビノガラクタン(粘液質)、タンニン、カフェ酸、クロロゲン酸、精油(ファルネソール)
    作用
    発汗、鎮静、利尿
    適応
    風邪、高血圧、不眠、上気道カタル

TIPS

 ヨーロッパが原産の高木です。樹高は40m程になります。鎮静効果が高いハーブです。作用が穏やかなので、子供からお年寄りまで安心して使用できます。リンデンの木の部分を使用したものをリンデンウッド、花・苞を使用したものをリンデンフラワーといい、2種類あります。リンデンの木は「1000の用途」があるといわれるほど様々に利用されています。リンデンはライムとも呼ばれますが、柑橘のライムとは異なるものです。リンデンフラワーは特に癒しの効果に優れます。精神的な緊張・不安・イライラを取り除いてくれます。その場合はオレンジフラワーとのブレンドが有名です。また、発汗、利尿作用に優れ、風邪、インフルエンザ、高血圧、上気道カタル、不眠などに用いられます。

 リンデンにはフラボノイドの中でも血圧の正常化を促進する効果が高いピオフラボノイドという成分が多く含まれています。この成分の特徴は血圧を正常値まで下げ、くわえて動脈硬化の原因になる血管の径を拡げる効果をもっています。利尿作用が強いのも大きな特徴です。人間の体内に多くの水分があると、これを循環させるために心臓に負荷がかかります。そして血流を維持しようとすると血圧が上昇し高血圧になります。この症状を改善するには、心臓の負荷を減らし血液の流れをより良くするために過剰な水分を体外に排出する必要があります。このようにリンデンには、血管の状態を整えるだけではなく水分量を調整する効果があり、このため高血圧と動脈硬化になりやすい人、その再発防止にはうってつけのハーブです(健康レシピ3:動脈硬化など生活習慣病)。注意点としては、利尿作用があるため、腎臓疾患がある人ならびに降圧薬や利尿剤などの薬剤を服用している場合には医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

リンデンの安全性について

適切に使用する場合、クラス1に分類されます。

レシピ

リンデンのティー

ハーブティー
作り方:
  • 細かくしたリンデンを熱湯で5分間抽出し、茶こしを使ってカップに注ぎます。

リンデンを使ったフランス料理:10種の野菜と車海老のテリーヌ、リンデンの香り

リンデンを使ったフランス料理「10種の野菜と車海老のテリーヌ、リンデンの香り」

コンソメの作り方:

A)コンソメのベースとなるブイヨン

  • 鶏ガラは時間をかけて血合い、余分な脂を綺麗に取り除き水にさらしておきます。そうすることで仕上がりのブイヨンに雑味がなくよりクリアーなものに仕上がります。
  • 玉葱、人参は丸のまま、セロリは大きめにカットします。長時間煮込む為、野菜が溶けてブイヨンが濁るのを防ぐ為に丸のままいれます。ただし、味が出やすいように芯の部分に切り込みを入れます。玉葱にクローブ2~3粒を刺します。クローブを入れることで脂っこくなくすっきりとした味わいが生まれます。
  • 十分に水にさらした鶏ガラ、丸鶏を鍋に入れたっぷりの水をはり、火にかけます。沸騰したら、アクを十分に取り除き、野菜と他の材料を入れます。後は浮いてくるアクを取りながら弱火で煮込みます。その時の素材に応じて多少時間は変わりますが、8時間を煮込む目安とします。これを「ミジョテ」といい、フランス料理の世界では弱火でコトコト煮込むことです。そうすることで濁りのない、クリアーなブイヨンに仕上がります。
  • 8時間後ネル(なければサラシ)を使いレードルで丁寧に濾します。その時一気に鍋ごと返そうとすると濁る原因になるので注意が必要です。
B.コンソメの作り方:
  • 先ほどのブイヨンを良く冷やします。冷えたら余分な脂が浮き固まっているので取り除きます。
  • 牛すねおよび牛ももミンチ、玉葱、人参、セロリを混ぜ合わせます。ここでは、野菜とミンチ、卵白がよく混ざり合うように野菜はスライスにします(フランス語でスライスにすることを「エマンセ」という)。そこにトマトピューレ、ざく切りにしたトマト、ローリエ、岩塩、玉葱の皮**、軽く泡立てた卵白を良く混ぜ合わせ、ブイヨンを入れ火にかけます。最初は混ぜながら火を入れ、60℃位になったら混ぜるのをやめます(卵白は60℃前後から凝固が始まり80℃以上で完全に凝固する)。卵白の性質を利用し、卵白が不味(ふみ)成分や濁りの成分とともに固まり簡単にすくい取ることができます。これは肉類を煮たときの灰汁の発生原理を応用し効率を高めています。つまり、肉類から煮汁に溶け出し、熱変性で凝固するときに様々な癖の強い不味成分や濁りの成分を吸着する水溶性タンパク質の供給を、泡立てた卵白を加えることで極端に多くし、除去したい成分の吸着率を大幅に高くしているのです。
  • その後はブイヨン同様、「ミジョテ」の状態で8時間煮込みます。その間中心に穴を開け液体が循環するようにします。そうしないと濁る原因になるので注意が必要です。
  • 8時間後ネル(なければサラシ)を使いレードルで丁寧に濾します。その時一気に鍋ごと返そうとすると濁る原因になるのでここも注意が必要です(これもブイヨンと同様)。ちなみにコンソメとはフランス語で「完成された」を意味しており、その名の通り澄んでいて琥珀色のスープ(玉葱の皮に含まれる茶色い色素でコンソメの艶のある色合いを引き出す)になります。
*玉葱の皮に抗酸化ポリフェノールの一種、ケルセチンが含まれています。玉葱の白い部分にもこのケルセチンは含まれていますが、玉葱の皮にはその約30倍も含まれています。現代病といわれる生活習慣病からがんに至るまでの予防効果、また身近なものでは肩こりの解消まで期待できます。
この料理にはこのワインがおすすめ
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自然派・ビオワイン

キュヴェ・アナテーム・ブラン 2013 ドメーヌ・モン・ド・マリー

    銘柄
    キュヴェ・アナテーム・ブラン
    ヴィンテージ
    2013年
    タイプ
    品種
    ユニ・ブラン
    原産国
    フランス・ラングドック・ルーション
    造り手
    ドメーヌ・モン・ド・マリー

 樹齢70年のユニ・ブラン100%。ソーヴィニャルグ村の近く、陽の当たるのが遅い北向き区画で、周囲より気温が3~4℃涼しいので、南仏にも関わらずきれいな酸が出るのが特徴です。ぶどうを丸ごとプレスし搾ったジュースをデブルバージュして発酵、9ヶ月間シュール・リーにて熟成させます。

 車海老や数種類に野菜、すっきりとしたコンソメゼリー、ハーブソースに、柑橘系でさわやかな味わいがよく合います。

tasting notes
ソムリエのテイスティングコメント
レモンなどの柑橘類やカリンなどのニュアンスが感じられます。果実味が主体のアロマで、より厚みがあり滑らかで、芳香性が高く、丸みがありながらさわやかな味わいが特徴のワインです。