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聚楽内科クリニック院長先生の
健康講座

第15回:

新型コロナウイルス感染拡大時の老人ホームにおけるチェックリスト
人は同じ情報を得て(見て)も同じ理解(意味)にはならない

    開催日:
    2020年4月22日
    場所:
    特別養護老人ホーム 風の木苑
    講師:
    聚楽内科クリニック院長 武本重毅
みなさんは、同じ数字をみて、違う意味にとることはないでしょう。
あるいは、ひらがなを見れば、百人が百人同じ読み方をするでしょう。

しかし、この10年くらいの間に
人間の脳の物のとらえ方には
人それぞれの特徴があることがわかってきました。

極端に言えば、
人には、本当の物の姿が見えておらず脳で構成された人工物としてとらえているというのです。

また、
人が遠い昔の先祖から引き継いだ本能で
誰もが同じように見間違う
という場合があることもわかってきました。
これは錯視といわれています。

それが、絵画、あるいは図形のようなものになると、
その解釈が人によって大きく異なり、
それまでの人生でそれを扱うことがあった人とない人では
理解の程度がまるで変わってきます。

今の世の中、多くの情報や見る物が氾濫しています。
それを全部いっぺんに頭に取り入れることなどできません。
天才ならできる!と言う方もいるでしょうが
それは誤解です。

天才とは
一つのことだけに異常なほどの知識欲と探究心をもつ人のことです。

では、われわれの場合はどうでしょうか。

自分に必要なこと
好きなこと
心地よいことは
スーッと頭に入ってきます。

逆に
要らないこと
嫌いなこと
気分を害する情報は
侵入を閉ざしています。

このように情報を選択しながら
頭が爆発しないように気をつけながら
人生を歩んでいるわけです。

先ほどの絵画、あるいは図形
それ加えて、文字の順序や物の並び方
紙面上の構造物の理解などは
それまで生きてきた中での学習や経験
あるいは、信念?
というものにより
人それぞれの受け取り方に違いが出てきます。
そして、その結果が異なる場合が出てきます。

これを認知バイアスといいます。

同じ情報を得て(見て)も
受け取る人によっては
全く異なる物を得て(見て)いることがあるのです。

特にその中でも
最近注目されているのが
正常化バイアスというものです。

例えば
大きな津波が迫ってきたり
川が氾濫している時に
一目散に高台に逃げる人がいる一方で

「私は大丈夫だ」と
その被害の様子をビデオに撮ったりして逃げ遅れる人がいます。

今なら
新型コロナウイルス感染が広がっているというのに
イタリアのベネチアで芸術祭を開催したり
アメリカの大学生がフロリダで戯れていたり…。
喫煙すれば、受動喫煙でも
様々ながんや呼吸器障害
新型コロナウイルス肺炎の重症化になると
わかっていても止めることができない。

多種多様な人と

次々に起こる社会変化の中で

「直感」や「これまでの習慣通り」

というほど危うい選択はありません。



さて、本日のテーマは
「新型コロナウイルス感染拡大時の老人ホームにおけるチェックリスト」です。

まだ新型コロナウイルス感染については、不明な点が多いのですが

各国で外出・営業制限などの対策が進められている中
世界の感染者は250万人、死者17万人となりました。
国内でも感染者は1万1300人を超え、死者は280人です。

一月半前にお話した頃とは桁違いの流行です。

治療薬やワクチン開発は進んでいますが
実際に使われるようになるには、まだ1~2年は必要でしょう。

そして
ウイルス感染者が他の人に感染させるのは
発症の2日前がピークということが報告されました。

ウイルスに対する免疫を獲得するのに
2週間くらい必要といわれてきましたが
それ以上症状が続く人や再感染したと思われる人も報告されています。

さらには
路上で死亡している人から新型コロナウイルスが見つかっています。

このように
今の日本では、誰がウイルスに感染しているかわからず
いつ、どこで感染してもおかしくないような状態となりました。

前回ご説明しましたように
ウイルス対策は
イソジンガーグルによるうがいとその原液でコップや歯ブラシの消毒 アルコールで手指消毒
ハイター(ブリーチ、次亜塩素酸ナトリウム)を薄めて環境の消毒です。

スーパーなどで買ってきた材料は熱を加えて調理しましょう。
外から帰宅したら、シャワーを浴びましょう。

経済再開の3つの条件は
感染拡大の鈍化
検査拡充
医療体制です。

日本では再生度数(一人の感染者が新たに何人に感染させるか)が高く ドイツやニューヨーク州のように
できるだけ早く1未満の値になることを期待するしかありません。

検査拡充も設備や人員不足が続いており

医療体制は院内感染で崩壊の危機にあります。

抗体検査で免疫獲得者を調べるという試みが
米国カリフォルニア州ロサンゼルスで行われ
成人の4.1%が抗体を持ち
感染者8,000人に対して
既に22万1,000~44万2,000人が既に感染していた可能性があるとされました。

そして、このことは
まだ1,000万人近くに感染が広がる危険性を示しています。

ゴールデンウイーク明けの活動再開を待ち望む人々が大勢いると思いますが
まだまだ延長するしかないでしょう。

学生たちは学業に専念することができず
まるで戦時中のようです。

このような社会では、犯罪に注意する必要があります。
また、刑務所内での感染は、一気に広がりますので
治安の維持が大事です。

このように、社会そのものが変化し始めており
高齢者人口や健康寿命が減少に転じていくことでしょう。



だからこそ 我々の施設の役割は重要であり
我々自身のまわりでも注意が必要です。



まだまだ長期戦の様相を呈してきた
新型コロナウイルスとの戦いの中で

入所者を守っていくためには
従業員の皆さんが共通した意識をもって
日々の仕事の中でチェックリストを活用しながら

すなわち、「直感」や「習慣」として

全く同じ知識と感覚を共有しながら

同じ質のサービスを提供していく必要があります。
※この記事は2020年4月22日に風の木苑にて開催した健康講話の内容をまとめまたものです。