フレイル・サルコペニアが発症する新しいメカニズム
超高齢社会において、フレイルや加齢に伴う筋量・筋力の低下(サルコペニア)は喫緊の社会的・経済的問題となっています。
フレイル・サルコペニアを引き起こす原因は、多くの部分が未解明ですが、
近年、加齢に伴うNAD+の低下が老化関連疾患の発症・進行に深く関わることがわかってきました。
NAD+は非常に多くの酵素反応に関わり、
老化・寿命の制御因子として知られるサーチュインをはじめ、
代謝・生存など数多くの生化学反応・細胞内過程に関わっています。
特にNAD+合成中間体の
ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)や
ニコチンアミド・リボシド(NR)を
摂取することで、加齢に伴って低下した細胞/組織内NAD+を上昇させられるため、
これらの「NAD+ブースター」と呼ばれる分子が抗老化物質の有力な候補として大きな注目を浴びています。
また、NMNのヒトにおける臨床治験において、
その有用な効果が骨格筋特異的に認められることが報告されていました。
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井 秀典)の伊藤尚基プロジェクトリーダー、
今井眞一郎理事長特任補佐を中心とする研究グループは、
NMNを細胞外から取り込むトランスポーターであり、
NMN依存的にNAD+を上昇させる
Slc12a8に注目し、
脳の外側視床下部という領域における機能低下が
フレイル・サルコペニアを引き起こす中枢性の一因であることを突き止め
このフレイル・サルコペニアが発症する新しいメカニズムをCell Reports誌に発表しました。