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院長日記

天然痘テロは起こるか?  蟻田 功

武本 重毅

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 WHOの天然痘根絶成功1980年,その後30年が経った.その間,世界は天然痘患者ゼロ,そして副作用の多かった天然痘ワクチンの廃止という大きな利益を経験した.しかし最近の国際医学事情は,残念ながらこれが永遠に続くとは楽観という見方も出てきた.最近の中東や極東で起こっている政治紛争,そして天然痘ウイルスは合成する事が可能という予測,またウイルスのテロリストによる兵器としての使用が起こるかもしれないという憂慮から,天然痘はまた大きな社会医学の問題となりつつある.いずれにしろ,この問題の的確な処理は今後の人類の生存という問題からみても大切である.テロが起こる確率は少ないであろうが,もし起こればその被害は人類生存の危機にもなるかもしれない.ではどのような対策があるか.
(蟻田 功,武本重毅 公衆衛生 77(6) 505-508 2013年6月)

WHO本部で陣頭指揮をとり天然痘撲滅に多大な貢献をされた蟻田功先生ご夫婦と私(蟻田先生のご自宅にて)

 最近、当クリニックでもおとなの風疹の抗体検査と予防接種費用助成制度による検査とワクチン接種をおこなっています。ここ数年間の海外旅行者による日本国内での流行に危機感をもった政府の対策が始まったのです。日本で少子化が進む中、妊娠中に感染すると胎児に問題が起こるということからも、対策を急ぐ必要がありました。

 また、沖縄では、インフルエンザが猛威を振るっており、学級閉鎖や市中病院外来がパンクしそうな勢いとなっており、抗ウイルス薬が不足しているといいます。沖縄旅行から帰ってから発熱したらインフルエンザウイルス抗原検査を受けるようにしましょう。

 さらには人間だけにとどまらず、豚コレラの感染が拡大し、農林水産省は頭をかかえています。殺処分と消毒だけでは感染拡大をとめることができそうにありません。

 これらは全て日本で急速に進む国際化、外国人観光客誘致の影響を否定できないのではないでしょうか。今年のラグビーワールドカップ、そして来年の東京オリンピックが日本にもたらすのは、経済効果による富と近代的なインフラ整備だけではないのかもしれません。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。