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院長日記

新型コロナウィルス感染症COVID-19で人々の老化は進行した

【1】ウイルス自体による加齢促進

■ 慢性炎症(inflammaging)の促進

COVID-19は強い免疫反応を引き起こし、「サイトカインストーム」や慢性的な炎症状態を残すことがあります。これは加齢とともに進む「炎症性老化」(inflammaging)と同様の現象です。

■ ミトコンドリア機能の低下

SARS-CoV-2はミトコンドリア機能を阻害することで免疫系をかく乱し、エネルギー産生の低下や酸化ストレスの増加を招くことが示されています。ミトコンドリアの機能不全は生物学的老化の大きな要因です。

【2】感染後の「生物学的年齢」の上昇

■ エピジェネティック・クロックの研究

・ある研究では、COVID-19感染後にエピジェネティック年齢(DNAメチル化による生物学的年齢)が平均7歳進んだという報告があります。
・特に重症例や高齢者でその傾向が強いとされています(PMID: 35061421 など)。

【3】生活習慣の悪化による老化促進

■ 運動不足・食習慣の乱れ

パンデミック中の外出制限や社会的孤立により、
• 身体活動量の低下
• 不健康な食事
• 睡眠リズムの乱れ
• ストレスの増加

などが重なり、「生活習慣性老化」が進行しやすい環境になりました。

【4】COVID-19後遺症と老化の共通項

いわゆる「ロングCOVID」では、
• 脳の霧(brain fog)
• 疲労感(chronic fatigue)
• 筋力低下
• 免疫力の低下

といった症状がみられ、老化に伴う変化とよく似た様相を呈します。

【結論】

COVID-19は
1. ウイルス自体の影響(炎症・ミトコンドリア障害)
2. 感染による生物学的老化の加速
3. 生活習慣の悪化
4. 後遺症の類似性

の4つの側面から「人々の老化を促進した」と考えられます。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。