最終糖化産物(AGE, AGEs)
「最終糖化産物」は、英語では Advanced Glycation End-products (AGEs) と呼ばれる物質です。
最終糖化産物(AGEs)とは?
AGEsは、体内で過剰な糖がタンパク質や脂質と結びつき、「糖化」という反応を経て生成される物質です。この糖化反応は、高温調理された食品(焼く、揚げるなど)にも多く見られ、食べ物からもAGEsが体内に取り込まれることがあります。
なぜAGEsが問題なのか?
AGEsは強い毒性を持ち、体内で一度生成されると分解されにくく、様々な臓器や組織に蓄積していきます。これにより、以下のような影響を引き起こし、老化や様々な病気の原因となると考えられています。
- 老化の促進:
- 肌: コラーゲンなどのタンパク質が糖化することで、肌の弾力性が失われ、シワ、たるみ、くすみ(黄ばみ)の原因となります。
- 骨: 骨のコラーゲンが糖化すると、骨の強度が低下し、骨粗鬆症のリスクが高まります。
- 生活習慣病との関連:
- 動脈硬化: 血管のコラーゲンが糖化すると、血管が硬くもろくなり、動脈硬化を進行させます。これにより、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まります。
- 糖尿病合併症: 糖尿病患者では、高血糖状態が続くためAGEsが大量に生成・蓄積し、神経障害、網膜症、腎不全といった合併症を引き起こす大きな要因となります。
- メタボリックシンドローム: AGEsは内臓脂肪を悪玉化させ、血糖値上昇の悪循環を生み出すと考えられています。
- 認知症: アルツハイマー型認知症において、アミロイドβやタウタンパクの糖化が悪影響を与えることが示唆されています。
- 白内障: 目のレンズである水晶体のタンパク質が糖化することで、白内障の一因となります。
AGEsを減らすには?
AGEsの蓄積を抑えるためには、主に以下の点に注意することが重要です。
- 血糖値のコントロール: 血糖値が高いほどAGEsが生成されやすいため、食後の血糖値の急上昇を抑えることが大切です。
- 食物繊維を多く含む野菜から食べる(ベジファースト)。
- 糖質の過剰摂取を控える。
- 適度な運動を心がける。
- 食事からのAGEs摂取を減らす:
- 高温で調理された食品(揚げ物、焼き物、炒め物など)の摂取を控えめにする。
- 蒸したり、茹でたりする調理法を選ぶ。
- 抗酸化作用のある食品を摂る: ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEなど、抗酸化作用のある栄養素を積極的に摂ることも、AGEsの生成抑制に役立つ可能性があります。
AGEsは「老化物質」とも呼ばれ、健康寿命を延ばすためにも、その生成・蓄積を意識した生活を送ることが大切です。
AGEs(最終糖化産物)は「老化物質」と表現されることが非常に多いようです。
その理由は、AGEsが体内で蓄積していく過程と、それが引き起こす様々な影響が、私たちの体の老化現象と密接に関わっているからです。
AGEsが「老化物質」と呼ばれる具体的な理由
- 体の「コゲ」を引き起こす:
- 酸化が「体のサビ」と呼ばれるのに対し、糖化は「体のコゲ」と表現されます。体内のタンパク質や脂質が糖と結びついて変性し、まるで加熱されて焦げ付くように機能が損なわれるためです。
- 特に、肌のハリや弾力を保つコラーゲンなどが糖化すると、硬くもろくなり、肌のシワやたるみ、黄ぐすみとして現れます。これは、ホットケーキが焼けてきつね色になるように、体内で焦げ付きが起こるイメージに例えられます。
- 一度できると分解されにくい:
- AGEsは非常に安定した物質であり、一度体内で生成されると、なかなか分解・排出されにくい特性を持っています。そのため、年齢を重ねるごとに体内に蓄積されていき、様々な組織や臓器にダメージを与え続けます。
- 全身の組織・臓器に悪影響を及ぼす:
- AGEsは、血管、骨、脳、目など、全身のほとんどすべての細胞や分子に影響を及ぼします。
- 血管: 血管の弾力性を奪い、硬化させることで動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。
- 骨: 骨のコラーゲンを劣化させ、骨粗鬆症を引き起こします。
- 脳: アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβやタウタンパクの糖化を促進すると考えられています。
- 目: 白内障の進行に関与します。
- これらの影響は、まさに加齢に伴って現れる症状や病気と一致するため、AGEsが老化そのものを促進する物質であると認識されています。
- 炎症と酸化ストレスを誘発:
- AGEsは、体内で炎症反応を誘発し、さらに活性酸素の発生(酸化ストレス)を促進すると考えられています。炎症と酸化ストレスは、細胞や組織にダメージを与え、老化や様々な疾患の進行を加速させる主要な要因です。
このように、AGEsは体内の細胞や組織に複合的なダメージを与え、様々な老化現象や加齢性疾患の引き金となることから、「老化物質」と呼ばれ、その対策がアンチエイジングや健康寿命の延伸において重要視されています。