Director's blog
院長日記

睡眠がAGEsに影響するメカニズム

武本 重毅

カテゴリー: 

主に以下の要因が関係しています。

  1. 成長ホルモンの分泌と細胞の修復・再生:
    • メカニズム: 成長ホルモンは、特に深い睡眠(ノンレム睡眠)中に多く分泌されます。このホルモンは、日中に損傷した細胞の修復、新しい細胞の生成、そして組織の再生を促進する働きがあります。
    • AGEsへの影響: AGEsは細胞や組織のタンパク質にダメージを与えるため、成長ホルモンによる細胞の修復・再生が滞ると、AGEsが結合したままの損傷した細胞が蓄積しやすくなります。十分な睡眠によって成長ホルモンが適切に分泌されることで、これらの損傷が修復され、AGEsの蓄積が間接的に抑制されると考えられます。
  2. メラトニンの分泌と抗酸化作用:
    • メカニズム: 睡眠中に分泌されるメラトニン(睡眠ホルモン)は、強力な抗酸化作用を持つことが知られています。
    • AGEsへの影響: AGEsの生成過程には酸化ストレスが深く関与しています。メラトニンの抗酸化作用により、体内の酸化ストレスが軽減されれば、AGEsの生成そのものが抑制される可能性があります。
  3. 血糖コントロールへの影響:
    • メカニズム: 睡眠不足は、インスリンの感受性を低下させ、血糖値を上昇させることが多くの研究で示されています。睡眠時間が短いと、血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなったり、血糖値を上げるホルモン(コルチゾールなど)が増加したりする傾向があります。
    • AGEsへの影響: 血糖値が高い状態が続くと、AGEsの生成が加速されます。したがって、睡眠不足による血糖コントロールの悪化は、直接的にAGEsの生成・蓄積を促進することになります。
  4. 食行動とAGEs摂取量への影響:
    • メカニズム: 睡眠不足は、食欲を増進させるホルモン(グレリン)を増やし、食欲を抑制するホルモン(レプチン)を減らす傾向があります。これにより、食欲が増して高カロリーな食品や糖質の多い食品(AGEsが多く含まれる可能性のある食品)を摂取しやすくなることがあります。
    • AGEsへの影響: 食事から摂取されるAGEs(外因性AGEs)も体内のAGEs蓄積に寄与します。睡眠不足が不健康な食行動に繋がり、結果として外因性AGEsの摂取量が増える可能性があります。

まとめ

質の良い十分な睡眠は、成長ホルモンやメラトニンの分泌を促し、細胞の修復・再生を助け、酸化ストレスを軽減し、さらに血糖コントロールを良好に保つことで、AGEsの生成と蓄積を抑制する効果が期待できます。

逆に、慢性的な睡眠不足は、これらのメカニズムが適切に機能しなくなるため、AGEsの生成が促進され、体内に蓄積しやすくなると考えられます。これは、肌の老化、動脈硬化、糖尿病合併症など、AGEsが関与する様々な健康問題のリスクを高める要因となります。

したがって、AGEs対策として、食生活や運動習慣だけでなく、質の良い十分な睡眠を確保することは非常に重要です。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。