Director's blog
院長日記

ストレスは“ミトコンドリア”を壊す? ──自律神経とATPの知られざる関係

武本 重毅

■ 「ストレスで疲れた…」は、単なる気のせいではない
「最近、ずっと気が張っていて疲れが取れない」
「寝てもスッキリせず、イライラしやすくなった」
「ストレスに弱くなった気がする」

こうした不調を感じる方の多くに、実は「ミトコンドリア機能の低下」が隠れています。

ストレスが続くと心だけでなく、細胞レベルで“発電所”が疲弊する──
今回は、自律神経とミトコンドリアの密接なつながりをテーマに、“ストレスとATP(エネルギー)”の関係をひもときます。

■ ストレスとは「エネルギーの消耗戦」
私たちの体は、精神的な不安や緊張、怒り、プレッシャーなどを受けると、
交感神経が優位になり、心拍・血圧・呼吸・血糖が上昇します。

これは「闘うか逃げるか」の反応(fight or flight)であり、大量のエネルギー=ATPを消費する状態です。

つまり、ストレスを受け続けるということは、
ミトコンドリアがフル稼働し続けて疲弊していくということ。
その結果、ATPが枯渇し、細胞の修復や免疫機能、ホルモンバランスにも悪影響が及ぶのです。

■ 自律神経とミトコンドリアは相互作用している
最近の研究では、ミトコンドリアが自律神経系の中枢である視床下部や迷走神経にも関与していることがわかってきました。
• ミトコンドリア機能が低下すると、副交感神経の働きも弱まり、リラックスできなくなる
• 逆に、交感神経が過剰になると、活性酸素(ROS)が増え、ミトコンドリアを酸化ストレスで傷つける
• ATP不足が脳や腸にも波及し、睡眠の質や消化吸収の低下にもつながる

このように、自律神経とミトコンドリアは一方向ではなく「双方向の関係」にあるのです。

■ ストレス対策 = ミトコンドリア保護
当クリニックでは、ストレス起因の慢性疲労や不眠、だるさなどに対して、次のような「ミトコンドリア活性化+リラクゼーション療法」を併用しています:
•  水素ガス吸入 → 活性酸素(ヒドロキシルラジカル)除去、脳神経のリセット
•  NMN補充 → NAD⁺レベルを上げ、ATP回復と副交感神経活性に寄与
•  5-ALA投与 → ミトコンドリアの酸化還元回路をサポート
•  深い呼吸・ストレッチ・音楽療法 → 副交感神経優位化
•  睡眠環境の整備(WOTTマット使用など)

つまり、ストレスに負けない体づくりは、“ミトコンドリアを守る”ことから始まるのです。

■ まとめ:「ストレス社会」とミトコンドリア活性化の必然性
現代人は、日々エネルギーを過剰に使わされる生活を送っています。
それに見合う「細胞の再生」や「ATP回復」ができていなければ、心も体もやがて限界を迎えます。

ストレス対策とは、単に休むことではありません。
細胞から“回復力”を取り戻すこと──それが本当のミトコンドリア活性化です。

次回予告:
「ミトコンドリアと睡眠の深い関係──夜に“細胞が修復される”って本当?」

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。