【第1回】Mito Rising応用編:「脳とMito Rising」
ミトコンドリアで“脳の老化”を止める──認知症・うつ・脳疲労への新アプローチ
40代以降、「物忘れが増えた」「集中力が落ちた」「やる気が出ない」といった悩みが増えてきたと感じる方は多いのではないでしょうか。その背景には、脳のエネルギー源を担う“ミトコンドリア”の働きの低下があるかもしれません。
神経細胞とATP──脳のエネルギーはミトに依存している
脳は体重のわずか2%ほどの重量しかありませんが、私たちが一日に使うエネルギーの約20%以上を消費しています。神経細胞は、ATP(細胞エネルギー通貨)を大量に必要とし、その大部分はミトコンドリアでつくられます。
つまり、ミトコンドリアの機能が落ちれば、神経の伝達速度も記憶力も、感情の安定も保てなくなるのです。
認知症とミト機能──アルツハイマーの背景にある“エネルギー障害”
近年、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、「ミトコンドリアの機能不全」が一因と考えられています。特に海馬(記憶を司る部位)では、ミトコンドリアの数や形の異常、活性酸素によるDNA損傷が観察されています。
また、ATPの不足によりアミロイドβなどの老廃物を分解・除去する力が弱まり、炎症が慢性化する悪循環も指摘されています。
BDNFとNAD⁺──神経の“再生力”を支えるミト活因子
脳の可塑性(柔軟性)に関わる重要な物質に「BDNF(脳由来神経栄養因子)」があります。これはミトコンドリアが活性化された状態で分泌が促進され、神経の修復・新生に貢献します。また、ミト機能を支える補酵素「NAD⁺」は加齢とともに減少しますが、これを補うNMNなどの摂取により、長寿遺伝子SIRT1を介してBDNFの発現が増えることも示されています。
脳のMito Risingに効く習慣──今日からできる5つの実践法
以下のような日常習慣は、脳のミトコンドリアを活性化させ、神経の再生やストレス耐性に役立ちます。
1. 有酸素運動:週3回以上の軽いジョギングやウォーキング
2. 良質な睡眠:深い睡眠中にミト修復が促進される
3. ポリフェノール摂取:カカオ・ブルーベリーなど抗酸化食品
4. ビタミンB群・亜鉛・ALA・NMNなどの補助因子の摂取
5. デジタルデトックス:スマホ疲れによる脳過労を防ぐ
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ミトコンドリアは「体の発電所」であると同時に、“脳の活力エンジン”でもあります。
“Mito Rising”によって、認知機能や感情の安定を保つことが、健康寿命の延伸だけでなく「思考の若返り」にもつながるのです。
次回は「腸とMito Rising」をテーマに、腸内細菌とエネルギー代謝の深い関係を紐解いていきます。