多臓器炎症症候群(MIS: Multisystem Inflammatory Syndrome)
多臓器炎症症候群(MIS)とは?
■ 定義
多臓器炎症症候群(MIS)は、感染や免疫反応に伴い、全身の複数の臓器に強い炎症が同時に起こる状態です。 特にCOVID-19関連では、以下の2タイプが報告されています:
タイプ 対象 発症タイミング
MIS-C 小児 COVID-19感染後数週
MIS-A 成人 同様に感染後数週
MIS-V(仮称) ワクチン接種者 接種後数日〜数週間内
特徴的な臨床所見(MIS-C/MIS-A)
- 持続する発熱
- 全身の強い炎症所見(CRP高値、Dダイマー高値など)
- 複数臓器の障害(心臓・肺・消化器・腎臓・皮膚など)
- 心筋炎・心膜炎や血圧低下、ショック
- ウイルスPCRは陰性のことが多く、抗体は陽性
MIS-V(ワクチン後のMIS様症候群)
■ MIS-Vの仮説
- mRNAワクチン接種後、過剰な免疫反応が引き金となって、MISに類似した炎症性疾患が発生する可能性が指摘されている。
- 本症例(14歳女性)のように、ワクチン後2日で発症・急死するほどの急性進行型は極めて稀。
■ 本症例との類似点
項目 本症例での所見
心臓症状 心房心膜炎、T細胞浸潤
肺 うっ血・水腫
消化管・肝臓・腎臓 炎症細胞の浸潤
感染性因子の否定 PCRすべて陰性
ワクチン誘発免疫反応 非常に高い抗体価(43,600 U/mL)
臨床経過 急性で致死的
病態の想定メカニズム
- ワクチン接種によりスパイクタンパク質が産生される
- これに対し過剰免疫反応が誘導される
- T細胞、マクロファージを介したサイトカインストーム様反応が生じる
- 血管炎や臓器への細胞浸潤→多臓器不全に至る
注意点・臨床的意義
- MISは稀ではあるが重篤な免疫系の暴走であり、若年者にも起こりうる。
- 特に心臓症状(心筋炎・心膜炎)を見逃さないことが重要。
- ワクチンの利益は大きいが、まれな重篤例も存在することから、監視・早期対応体制の強化が必要。