Director's blog
院長日記

ミトコンドリア機能を改善・維持すること

武本 重毅

ミトコンドリアは私たちの体内でATP(エネルギー)を産生する「細胞の発電所」として働く重要な小器官です。しかし加齢、酸化ストレス、運動不足、栄養バランスの乱れなどにより、その機能は低下します。

ミトコンドリア機能を改善・維持することは、エネルギー代謝の最適化、老化の遅延、神経疾患・生活習慣病の予防にもつながるとされています。

 

 ミトコンドリア機能を改善する主な方法

  1.  

 有酸素運動(Aerobic Exercise)

  • 運動習慣は最も強力なミトコンドリア活性因子です。
  • ジョギング、サイクリング、ウォーキングなどは、ミトコンドリアの新生(バイオジェネシス)と効率改善を促進します。
  • 運動によってPGC-1αという転写因子が活性化され、ミトコンドリア数と機能が増加。
  1.  

 栄養戦略(Mitochondrial Nutrition)

  • コエンザイムQ10(CoQ10):電子伝達系をサポート。特に高齢者に有効。
  • L-カルニチン:脂肪酸のβ酸化を促進。ミトコンドリアのエネルギー効率を高めます。
  • ビタミンB群(B1, B2, B3, B6):補酵素として代謝回路に不可欠。
  • ポリフェノール(レスベラトロールなど):抗酸化・ミトコンドリア活性効果あり。
  1.  

 インターミッテント・ファスティング(断続的断食)

  • 一定時間食を断つことで、AMPKやSIRT1が活性化し、ミトファジー(損傷ミトコンドリアの除去)が促進。
  • 同時に、新しいミトコンドリアの再構築も刺激されます。
  1.  

 睡眠の最適化

  • 深いノンレム睡眠時に、酸化ストレス修復とミトコンドリアの修復が促されます。
  • 睡眠障害はATP産生低下と関連するという研究も。
  1.  

 毒性ストレスの回避

  • 過剰なアルコール、重金属(鉛、水銀)、農薬などはミトコンドリアにダメージを与えます。
  • タバコ煙も強力なミトコンドリア毒。

 

 解釈と今後の展望

ミトコンドリアの質を保つには、「新陳代謝を促進しつつ、不要なミトコンドリアを除去する」という質の管理が鍵となります。これにより、細胞全体の代謝効率とストレス耐性が高まり、健康寿命の延伸や慢性疾患リスクの低下が期待されます。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。