アポトーシス(細胞の計画的な死)
アポトーシス(細胞の計画的な死)には、ミトコンドリア依存性経路(内因性経路)と、非依存性経路(外因性経路)の2種類があります。
がん細胞ではこの両方が関与しますが、ミトコンドリア依存性経路が主に細胞内ストレス応答に、非依存性経路が細胞外からの死シグナル応答に関与しています。
仕組みの比較
特徴 ミトコンドリア依存性(内因性) 非依存性(外因性)
刺激源 DNA損傷、酸化ストレス、低酸素など TNF-α、FasL、TRAILなどのリガンド
主なセンサー p53、Bax/Bak、BH3-onlyタンパク質 デスレセプター(Fas, DR4, DR5など)
経路の中心 ミトコンドリア外膜透過化(MOMP)→ シトクロムC放出 デスインデューシングシグナル複合体(DISC)形成 カスパーゼ活性化 カスパーゼ9 → カスパーゼ3 カスパーゼ8 → カスパーゼ3
がん細胞での回避機構 Bcl-2, Mcl-1などの過剰発現でミトコンドリア透過を阻止 デスレセプターやFADDのダウンレギュレーション
がん細胞の戦略的利用
- 多くのがん細胞はミトコンドリア経路を抑制してアポトーシスを回避しますが、非依存性経路に対してもデスレセプターの発現低下や、カスパーゼ8の抑制により耐性を獲得することがあります。
- 一部の治療戦略では、両方の経路を同時に刺激することで、がん細胞の逃避を封じる試みが行われています。
解釈と臨床的意義
がん治療においては、ミトコンドリア依存性経路を再活性化する薬剤(BH3ミメティクスなど)や、非依存性経路を刺激するデスリガンド系抗体(TRAILアゴニストなど)の併用が研究されています。
経路の選択性と感受性の違いを理解することは、がん細胞の“死”を誘導する最適な治療選択につながります。