免疫とミトコンドリアの関係:ME/CFSと長期COVID(PASC)に関する最新研究
- 研究の背景
- ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)は、強い倦怠感や思考力低下(ブレインフォグ)、運動後の回復遅延(PEM)などを特徴とする慢性疾患です。
- PASC(Long COVID/新型コロナ後遺症)も、似た症状を示すことがあります。
- これらの病気では「自己免疫(自分の免疫が自分を攻撃する現象)」と「ミトコンドリアの働きの異常」が深く関わっていることが注目されています。
- 研究の内容
ドイツと国際研究グループの報告(2025年、プレプリント※)によると:
- 患者さんの血液中の抗体(IgG)を取り出し、人の細胞に加えると、
ミトコンドリアが「断片化」し、エネルギー産生に影響することがわかりました。 - この変化は、患者さんごとに異なり、特に女性で顕著でした。
- また、このIgGは炎症を促す物質(サイトカイン)の分泌も変化させていました。
- ME/CFSの患者さんでは「エネルギーのつくり方の変化」、PASC患者さんでは「血液の固まりやすさの変化」など、異なる影響が見られました。
※「プレプリント」とは:査読(専門家のチェック)前の速報研究です。臨床診断や治療指針にはまだ使えません。
- 研究が示すこと
- 患者さんの抗体が、ミトコンドリアの働きや炎症反応を変化させることがある。
- これは「慢性疲労」や「ブレインフォグ」といった症状の一因になっている可能性があります。
- 今後、この仕組みを標的とする治療法(抗体や代謝異常への介入)が開発される可能性があります。
- イメージ
- 元気な工場(ミトコンドリア) → 煙突から白い煙(エネルギー)をもくもく
- 壊れかけた工場 → 屋根が崩れ、黒い煙が少ししか出ない
- 炎症のサイン → 工場の周囲に赤い警告ランプが点滅
- ME/CFS IgG → 工場の中の機械の「使い方」を変える
- PASC IgG → 工場周辺の「配管・血流」にトラブルを起こす
まとめ
この研究は、「免疫とミトコンドリアのつながり」が、慢性疲労症候群や長期COVIDの症状に関係している可能性を示しました。
まだ基礎研究の段階ですが、将来的には新しい治療法につながる重要な手がかりとなります。