Director's blog
院長日記

雑誌 CELL に私が研究していたウイルス発癌についての新しい発表がありました

武本 重毅

HTLV-1って何?

  • HTLV-1は「ヒトT細胞白血病ウイルス」
  • 主に免疫の司令塔である「CD4T細胞」に感染
  • 感染が続くと、白血病や神経症状の原因になることがあります。

「HTLV-1に感染した細胞は、老化細胞と同じように“しぶとく生き残る”性質を持つ」

 

老化細胞 👵

HTLV-1感染細胞 🦠

寿命

本来は寿命を迎えるが、死なずに残る

本来は死ぬはずだが、MCL-1が増えて生き残る

特徴

分裂せず、働きも低下

ウイルスに操られて増殖・炎症を促進

周囲への影響

炎症物質をまき散らし、老化を進める

免疫を乱し、白血病や神経障害の原因に

共通点

「死なずにしぶとく残る」存在

「死なずにしぶとく残る」存在

今回の研究の発見

  • 新しいマウスモデルで、HTLV-1感染の進み方を再現
  • 薬の組み合わせ(テノホビル+ドルテグラビル)が感染拡大を抑える。
  • 特殊なたんぱく質(MCL-1)を標的にすると、感染細胞だけを減らせる。

患者さんへの意味

  • 予防薬で「感染を防ぐ」道が開ける
  • 早めの薬で「ウイルスの広がりを止める」可能性
  • 新しい治療薬候補で「感染細胞をピンポイントに倒す」期待

Q&A形式(患者さん向け)

Q1:HTLV-1はどんな病気を起こしますか?
A:多くの人は症状が出ませんが、一部の人で「成人T細胞白血病(ATL)」や神経症状などを引き起こします。

Q2:今回の研究では何を調べたのですか?
A:HTLV-1が体の中でどう広がるかを再現し、どんな薬が有効かを調べました。

Q3:どんな薬が効きましたか?
A:エイズ治療に使う薬(テノホビル+ドルテグラビル)が感染の拡大を抑えました。

Q4:新しい治療の可能性はありますか?
A:はい。MCL-1という「細胞を守るスイッチ」を止める薬で、感染細胞を選んで減らすことができました。

Q5:すぐに使える治療ですか?
A:まだ研究段階です。ですが、今後の臨床試験に進めば、患者さんの治療選択肢が広がる可能性があります。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。