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院長日記

📖 論文紹介その2

武本 重毅

カテゴリー: 

「生薬成分オリドニンが白血病やリンパ腫の細胞を抑える働き」
Molecular Cancer Therapeutics誌, 2005年, Ikezoeら)

 

  1. この研究について

中国の伝統薬である「イヌハッカ(学名 Rabdosia rubescens)」から抽出されたオリドニンという天然成分が、白血病やリンパ腫など「血液のがん」に効果を示すかどうかを調べた研究です。

特に、成人T細胞白血病(ATLL)は治療が難しく、平均生存期間が1年に満たない場合もあり、新しい治療薬の開発が求められています。

 

  1. 主な発見
  • がん細胞の増殖を抑制
    オリドニンは、ATLL・急性リンパ性白血病・多発性骨髄腫など複数の血液がん細胞の成長を止めました。
  • がん細胞の“自滅(アポトーシス)”を誘導
    特にHTLV-1感染細胞(ATLL由来)では、時間とともに細胞死が増えました。
  • 治療抵抗性の原因タンパク質を減らす
    がん細胞が生き延びるために多く持っている「Bcl-xL」「Mcl-1」といったタンパク質を減少させました。
  • NF-κBという“スイッチ”をブロック
    NF-κBは炎症やがん細胞の生存に関わる遺伝子のスイッチですが、オリドニンはその働きを止める作用を持っていました。
  • 患者さん由来の細胞でも有効
    実際に患者さんから採取したATLL・リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫の細胞でも、オリドニンは効果を示しました。しかも正常なリンパ球には影響がほとんどありませんでした

 

  1. 患者さんへのメッセージ

この研究は、伝統薬からの天然成分「オリドニン」が、白血病やリンパ腫などの新しい治療の候補になる可能性を示したものです。

  • がん細胞だけを狙って弱らせる
  • 正常な細胞には大きな影響を与えない

という点で、今後の治療開発に大きな期待が寄せられます。

 

👉 わかりやすく言えば、
「自然の成分オリドニンが、がん細胞の“生き残りの仕組み”を壊して治療に役立つ可能性を示した」
というのが、この論文の結論です。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。