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院長日記

「どの腫瘍でNAMPTが過剰発現しているか?」

武本 重毅

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NAD代謝とがんの関連を考えるうえで重要なポイントです。

🔬 NAMPT過剰発現が報告されている主な腫瘍

研究報告をまとめると、以下のような腫瘍で細胞内NAMPT(iNAMPT)の発現上昇が観察されています。

  • 白血病・リンパ腫系
    • 急性骨髄性白血病(AML)
    • 慢性リンパ性白血病(CLL)
    • 多発性骨髄腫(MM)
    • 成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)でも高発現例の報告あり
  • 固形腫瘍
    • 乳癌(特にトリプルネガティブ型)
    • 大腸癌
    • 胃癌
    • 肺癌(非小細胞肺癌)
    • 膵癌
    • 前立腺癌
    • 卵巣癌
    • 悪性黒色腫(メラノーマ)
    • 脳腫瘍(グリオブラストーマ)

 

⚖️ 発現の意味

  • これらの腫瘍では、高い増殖能・代謝需要に応えるため、NAD供給を確保する必要があり、NAMPT過剰発現が「燃料供給装置」として働いています。
  • 一方で、血中に分泌されるNAMPT(eNAMPT/extracellular NAMPT)が炎症性サイトカイン様に働き、腫瘍微小環境を免疫抑制的・炎症促進的に傾けることも示されています。

 

📑 臨床的な示唆

  • 予後不良の指標としてNAMPT高発現が報告されている腫瘍もあります(例:乳癌、大腸癌、膵癌)。
  • 薬剤耐性(DNA修復や代謝リプログラミングを通じて)に関与することも知られています。
  • そのため、NAMPTは「治療標的」だけでなく「診断・予後マーカー」としても注目されています。

 

✅ まとめると:
NAMPT過剰発現は血液腫瘍から多くの固形癌まで広く報告されており、がん細胞の生存・進展のための共通戦略といえます。そのため、NAMPT阻害薬は「がん種を問わず応用可能な分子標的薬」として開発が進んでいます。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。