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院長日記

免疫細胞とミトコンドリア③

武本 重毅

記憶T細胞におけるミトコンドリアの役割

記憶T細胞(memory T cells)は、

過去に遭遇した抗原を迅速に再認識し、迅速かつ強力な二次免疫応答を引き起こします。

この高い持続力と応答性の背景には、ミトコンドリアの特異な機能と構造変化が深く関わっています。

 Key Mechanisms
機能          ミトコンドリアの役割
エネルギー供給     記憶T細胞は主に酸化的リン酸化(OXPHOS)と脂肪酸酸化(FAO)を利用して安定したATPを供給。
ミトコンドリア動態    記憶T細胞ではミトコンドリア融合が進み、電子伝達効率と酸化代謝能力が向上。
ミトコンドリア品質管理  ミトコンドリアのバイオジェネシス(新生)と自食作用(ミトファジー)がバランス良く行われ、細胞の長寿命性を維持。
代謝柔軟性       再刺激時には解糖系を迅速に立ち上げ、同時にミトコンドリアも活性化することで迅速な応答を可能に。

このように、記憶T細胞は、

ミトコンドリアの代謝的柔軟性・構造動態・品質管理を通じて、長期的な生存と迅速な免疫応答を実現しています。

特に酸化的リン酸化(OXPHOS)や脂肪酸酸化(FAO)の活用、

ならびにミトコンドリア融合による電子伝達効率の最適化が、

記憶形成・維持・再活性化において中心的な役割を果たします。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。