第1回:危機のあとに、進化がある ― パンデミックと戦争を越えて、人類はどこへ向かうのか ―
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私たちは、いま、時代のうねりの中にいます。
パンデミック、経済の混乱、そして戦争。
それらがほぼ同時期に、あるいは少しずつ時間差をもって、世界を覆ってきました。
感染症が広がると、人々は「命」の脆さと向き合い、
経済が揺らぐと、「暮らし」の不安が押し寄せ、
戦争が起きると、「平和」や「希望」そのものが試される――。
こうした一連の出来事を、私は決して“偶然の重なり”とは思えません。
まるで歴史の歯車が音を立てて回り、
何か新しい時代へと、人類を押し出そうとしているかのように感じるのです。
歴史を振り返ると、不思議なことに、
こうした危機のあとには、必ずといっていいほど、飛躍的な進歩が訪れていることに気づきます。
中世ヨーロッパを襲った黒死病(ペスト)の流行のあとに訪れたのは、ルネサンス。
世界大戦の荒廃の中から生まれたのは、国際連携と人権の概念。
エネルギー危機が、再生可能エネルギー技術を生み出し、
リーマンショックが、働き方や経済の価値観を見直すきっかけとなりました。
“危機”とは、破壊だけをもたらすのではなく、
その先にある“再構築”の始まりでもあるのです。
現代において、医療もまた大きく変わろうとしています。
病気を「予防する」「治す」だけでなく、
細胞そのものを若返らせる、
人間の“老い”に挑む時代が、本格的に始まりました。
それは、私たち一人ひとりが、これからの時代をどう生きるのか――
その在り方に深く関わってくると、私は感じています。
かつてない危機の時代に、私たちは生きています。
しかし、それは同時に、かつてないチャンスの時代でもあるのです。
医学は、“命を守る”という本質に立ち返りながらも、
“命を進化させる”という新たな地平を目指しはじめています。
その先にあるのは、「老化は治らないものだ」という思い込みからの解放。
そして、健康長寿を個人の希望だけでなく、社会全体の可能性として育てていく未来。
危機のあとに、進化がある――
それは、歴史が私たちに教えてくれている、もうひとつの真実なのです。