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院長日記

水素吸入と眠りの関係

武本 重毅

カテゴリー: 

~科学的研究から見えてきた新しい可能性~

 

はじめに ― 「眠れるようになった気がする」という声

当院でも水素吸入を続けている方から、こんなお声をいただくことがあります。

  • 「夜中に目が覚めにくくなった」
  • 「朝の目覚めがすっきりしてきた」
  • 「リラックスして眠りにつきやすくなった」

もちろんすべての方に同じような変化が現れるわけではありませんが、「眠りの質が変わったと感じる」方がいらっしゃるのは事実です。

なぜそのようなことが起きるのでしょうか。ここでは、水素と睡眠に関する国内外の研究を紹介しながら、その可能性を考えてみたいと思います。

 

睡眠が乱れる背景

眠りに関する悩みは年齢とともに増えていきます。背景にはいくつかの要因が知られています。

  1. 酸化ストレスの影響
    呼吸や代謝の過程で生じる「活性酸素」が過剰になると、脳や体に負担をかけ、眠りのリズムを乱すことがあります。
  2. 自律神経のアンバランス
    日中は交感神経、夜は副交感神経が優位になるのが自然ですが、ストレスや不規則な生活でこのバランスが崩れると「寝つきにくい」「眠りが浅い」状態につながります。
  3. 低酸素や血流の滞り
    夜間は呼吸が浅くなることもあり、一時的に低酸素状態が生じやすくなります。これが眠りを妨げる一因となることがあります。

 

水素とはどんなもの?

水素は宇宙で最も小さい分子で、体内のすみずみまで素早く行き渡る特徴があります。

研究では、特に体に悪影響を与える「ヒドロキシラジカル」や「ペルオキシナイトライト」などの活性酸素を選択的に減らす働きが報告されています。

つまり、水素は必要な働きを持つ酸素分子は残し、害の大きいものだけを抑えてくれる可能性があるのです。

 

研究でわかってきた「水素と睡眠」の関係

脳の健康を守る働き

東京都健康長寿医療センターの研究グループは、水素吸入によって「神経細胞のダメージが抑えられる」ことを示しました。脳のネットワークが守られることで、生活のリズムや睡眠の質に良い影響を与える可能性があります。

睡眠中枢への作用の可能性

アメリカ・UCLAの動物実験では、水素を含んだ水を飲んだマウスで「深い眠りが増える」「入眠が早くなる」といった変化が観察されました。また、睡眠をコントロールする脳の領域が活性化していたことも報告されています。これは水素が「眠りやすい状態」を後押しする可能性を示しています。

酸化ストレスや低酸素をやわらげる

水素は血流の悪い部分や酸素不足になりやすい部分に届きやすく、そこで発生する有害な活性酸素を抑えることがわかっています。これにより、夜間の「途中で目が覚める」といった悩みが軽減する可能性が考えられます。

自律神経のバランスに働きかける

韓国・延世大学での臨床研究では、水素吸入を数週間続けた参加者において「酸化ストレスや炎症の指標が改善した」という報告がありました。これらは副交感神経の働きを助け、リラックスした眠りをサポートする可能性があります。

 

「初日から眠れた」という体験について

一部の方では「初めて吸入した日の夜からよく眠れた」と感じることがあります。

これは水素がすぐに血中に入り、酸化ストレスを抑える働きを持つためと考えられます。ただし効果の現れ方は人それぞれであり、必ずしもすぐに変化を実感できるとは限りません。

 

安全性について

これまでの国内外の研究では、1~3%程度の水素吸入において大きな副作用は報告されていません。酸素療法や薬物治療に比べても、体に負担が少ない方法として注目されています。

ただし、水素吸入は「医薬品」や「承認された治療法」ではなく、健康維持・研究的取り組みの一環として行われています。効果には個人差があり、全ての方に同じような変化が起きるわけではありません。

 

まとめ

  • 水素には、酸化ストレスをやわらげる・神経を守る・自律神経を整えるなどの作用が研究で報告されています。
  • これらの働きが重なり、眠りの質をサポートする可能性が示されています。
  • 「不眠症の治療」と断定するものではなく、「眠りに悩む方の健康づくりの一助として期待されている」という位置づけです。

 

医師からのメッセージ

眠りに悩む方の多くは、「眠れない」という不安自体がさらに眠りを妨げる悪循環に陥っています。

水素吸入はその流れをやさしく断ち切り、自然な眠りを後押しする可能性がある方法として研究が進んでいます。

もし「眠りの質を改善したい」「睡眠薬以外の工夫を探している」と感じている方は、ぜひご相談ください。

最新の研究を背景に、患者さん一人ひとりの健康に寄り添ったサポートを一緒に考えていきましょう。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。