Director's blog
院長日記

がん細胞はなぜミトコンドリアを“送り込む”のか ⑤

第5章 治療応用の方向性

◆5-1 USP30阻害薬:ミトファジー耐性を壊す

USP30阻害薬はすでに複数の化合物が開発されており、
神経変性疾患などの治療候補として研究されている。

本研究により、USP30阻害薬は、

  • がん免疫療法の補助薬
  • ミトコンドリア移送阻害薬
  • ICI増強薬

として重要な候補となった。

◆5-2 TNT形成阻害剤・小型EV阻害剤

  • TNT阻害
  • EV阻害(特に小型EV)

はミトコンドリア移送を抑制する。

これらは、

  • 抗浸潤薬
  • 免疫増強薬
  • マイクロTME制御薬

などさまざまな形で応用可能である。

◆5-3 mtDNA変異の診断的価値

今後考えられる応用:

  • ICI反応予測
  • がん悪性度評価
  • 治療抵抗性の早期検出
  • TMEの代謝状態評価
  • “ミトコンドリア由来ctDNA”のリキッドバイオプシー

◆5-4 ミトコンドリア健康の臨床的重要性

T細胞が

  • NAD+低下
  • OXPHOS低下
  • ROS高値

などの状態にあると、
がん免疫は成立しない。

したがって、一般臨床でも

  • NAD+代謝改善
  • ミトコンドリア機能改善
  • 抗酸化サポート
  • 運動・代謝改善

などの介入は、
免疫治療の基盤作りとして重要になる。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。