エピローグ 「治る時代のはじまり」
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戦いが終わったあと、
アトピック城に訪れた朝は、
これまでとは少し違っていました。
光は強すぎず、
風は急がず、
すべてがちょうどよい速さで流れていました。
人々は気づきます。
「若返った」のではない。
「整った」のだと。
城下町では、小さな変化が起こり始めました。
夜、眠れるようになった人。
肌が、静かに回復していく子ども。
朝、もう一度やり直せると感じる大人。
誰もが、
「仕方ない」と思っていたものが、
「向き合える」ものへと変わっていきました。
姫は、もう塔には戻りません。
城の庭で、
子どもたちの手を取り、こう語ります。
「私の体は、壊れていたわけじゃない。
迷っていただけ」
彼女の肌は、
特別に輝いてはいません。
けれど、生きている光を宿していました。
遠くの丘の上で、
ミトコンドリアマンは、静かにその様子を見守っています。
彼はもう、戦いません。
教えるのです。
「エネルギーは、外から与えるものではない。
思い出させるものだ」
酸化が来たら、還元を。
炎症が燃えたら、鎮静を。
糖化が固めたら、流れを。
——そして、時間とは、
敵ではなく、対話する相手だと。
人々は、それぞれの生活に戻っていきます。
完璧ではない。
老いは消えない。
傷も、ゼロにはならない。
それでも——
治る道があることを知りました。
最後に、
ミトコンドリアマンは、空に向かってこう呟きます。
「老化は運命ではない。
選択の積み重ねだ」
朝日は、今日も昇ります。
奪われる夜明けではなく、
内側から生まれる朝として。
——治る時代は、
もう始まっている。
おしまい。

