Director's blog
院長日記

エピローグ 「治る時代のはじまり」

武本 重毅

戦いが終わったあと、
アトピック城に訪れた朝は、
これまでとは少し違っていました。

光は強すぎず、
風は急がず、
すべてがちょうどよい速さで流れていました。

人々は気づきます。
「若返った」のではない。
整った」のだと。

 

城下町では、小さな変化が起こり始めました。

夜、眠れるようになった人。
肌が、静かに回復していく子ども。
朝、もう一度やり直せると感じる大人。

誰もが、
「仕方ない」と思っていたものが、
向き合える」ものへと変わっていきました。

 

姫は、もう塔には戻りません。

城の庭で、
子どもたちの手を取り、こう語ります。

「私の体は、壊れていたわけじゃない。
迷っていただけ

彼女の肌は、
特別に輝いてはいません。
けれど、生きている光を宿していました。

 

遠くの丘の上で、
ミトコンドリアマンは、静かにその様子を見守っています。

彼はもう、戦いません。
教えるのです。

「エネルギーは、外から与えるものではない。
思い出させるものだ

酸化が来たら、還元を。
炎症が燃えたら、鎮静を。
糖化が固めたら、流れを。

——そして、時間とは、
敵ではなく、対話する相手だと。

 

人々は、それぞれの生活に戻っていきます。

完璧ではない。
老いは消えない。
傷も、ゼロにはならない。

それでも——
治る道があることを知りました。

 

最後に、
ミトコンドリアマンは、空に向かってこう呟きます。

「老化は運命ではない。
選択の積み重ねだ

朝日は、今日も昇ります。

奪われる夜明けではなく、
内側から生まれる朝として。

 

——治る時代は、

もう始まっている。

おしまい。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。