アルツハイマー病の治療は、いま大きく進化しています
―「アミロイドβ」から「タウ」へ―
アルツハイマー病は、脳の中で異常なタンパク質がたまることで、少しずつ記憶や判断力が低下していく病気です。
これまで長年研究されてきた結果、現在は次の2つのタンパク質が重要だと分かっています。
① アミロイドβ(病気の「きっかけ」)
アミロイドβは、脳の外側にベタベタした塊(プラーク)としてたまります。
- アルツハイマー病の最初の引き金
- 症状が出るかなり前から、静かに蓄積
- 最近、このアミロイドβを取り除く薬(抗体薬)が実用化されました
これにより
「病気の進行を遅らせられる」
ということが、はじめて人で証明されました。
② タウ(症状を進める「実行犯」)
一方、タウというタンパク質は、神経細胞の中で異常に絡まり合います。
- 記憶力・判断力の低下と最も強く関係
- タウが広がるほど、症状は進行
- アミロイドβが減っても、タウは進み続けることがある
つまり
「本当の症状の進行役はタウ」
と考えられています。
タウを狙った新しい治療が、ついに見えてきました
最近の研究では、タウを標的とした治療でも、次のような成果が報告されています。
✔ 脳の中で「タウが広がるスピード」を遅らせた
(PET検査という画像検査で確認)
✔ 記憶や認知機能の低下が、ゆるやかになる傾向
(完全に止めるわけではありませんが、確かな前進です)
これは、
「アルツハイマー病の進行そのものにブレーキをかけられる可能性」
を示す、非常に重要な成果です。
なぜタウ治療は期待されているのか?
分かりやすく言うと、
- アミロイドβ:
👉 病気のスタートボタン - タウ:
👉 病気を進行させるアクセル
という関係です。
そのため今後は、
「アミロイドβを抑えながら、タウも抑える」
= 2段階・2本柱の治療
が、より効果的だと考えられています。
まだ「治る」段階ではありませんが…
正直にお伝えすると、
- 現時点では
👉 完全に治す治療はありません - しかし
👉 「進行を遅らせる」ことは現実になりつつあります
これは、糖尿病や高血圧が
「突然治る病気」から
「コントロールできる病気」
になってきた流れとよく似ています。
これからのアルツハイマー病治療
今後は、
- 早期発見(血液検査・画像検査)
- アミロイドβ治療
- タウ治療
- 炎症・ミトコンドリア・生活習慣への介入
を組み合わせた
「総合的な治療・予防戦略」
が主流になっていくと考えられています。
当院から患者様へ
アルツハイマー病は、
「何もできない病気」ではなくなりつつあります。
正しい知識を知り、
できるだけ早い段階から向き合うことで、
未来は確実に変わり始めています。
気になることがあれば、
どうぞお気軽にご相談ください。
※本解説は、世界的医学誌 Cell に掲載された最新総説論文に基づいて作成しています

