Director's blog
院長日記

アルツハイマー病の治療は、いま大きく進化しています

武本 重毅

「アミロイドβ」から「タウ」へ―

アルツハイマー病は、脳の中で異常なタンパク質がたまることで、少しずつ記憶や判断力が低下していく病気です。
これまで長年研究されてきた結果、現在は次の2つのタンパク質が重要だと分かっています。

アミロイドβ(病気の「きっかけ」)

アミロイドβは、脳の外側にベタベタした塊(プラーク)としてたまります。

  • アルツハイマー病の最初の引き金
  • 症状が出るかなり前から、静かに蓄積
  • 最近、このアミロイドβを取り除く薬(抗体薬)が実用化されました

これにより
「病気の進行を遅らせられる」
ということが、はじめて人で証明されました。

タウ(症状を進める「実行犯」)

一方、タウというタンパク質は、神経細胞の中で異常に絡まり合います。

  • 記憶力・判断力の低下と最も強く関係
  • タウが広がるほど、症状は進行
  • アミロイドβが減っても、タウは進み続けることがある

つまり
「本当の症状の進行役はタウ」
と考えられています。

タウを狙った新しい治療が、ついに見えてきました

最近の研究では、タウを標的とした治療でも、次のような成果が報告されています。

脳の中で「タウが広がるスピード」を遅らせた

(PET検査という画像検査で確認)

記憶や認知機能の低下が、ゆるやかになる傾向

(完全に止めるわけではありませんが、確かな前進です)

これは、
「アルツハイマー病の進行そのものにブレーキをかけられる可能性」
を示す、非常に重要な成果です。

なぜタウ治療は期待されているのか?

分かりやすく言うと、

  • アミロイドβ:
     👉 病気のスタートボタン
  • タウ:
     👉 病気を進行させるアクセル

という関係です。

そのため今後は、

「アミロイドβを抑えながら、タウも抑える」
= 2段階・2本柱の治療

が、より効果的だと考えられています。

まだ「治る」段階ではありませんが…

正直にお伝えすると、

  • 現時点では
     👉 完全に治す治療はありません
  • しかし
     👉 「進行を遅らせる」ことは現実になりつつあります

これは、糖尿病や高血圧が
「突然治る病気」から
「コントロールできる病気」
になってきた流れとよく似ています。

これからのアルツハイマー病治療

今後は、

  • 早期発見(血液検査・画像検査)
  • アミロイドβ治療
  • タウ治療
  • 炎症・ミトコンドリア・生活習慣への介入

を組み合わせた
「総合的な治療・予防戦略」
が主流になっていくと考えられています。

当院から患者様へ

アルツハイマー病は、
「何もできない病気」ではなくなりつつあります。

正しい知識を知り、
できるだけ早い段階から向き合うことで、
未来は確実に変わり始めています。

気になることがあれば、
どうぞお気軽にご相談ください。

※本解説は、世界的医学誌 Cell に掲載された最新総説論文に基づいて作成しています

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。