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院長日記

【第3回】 ストレスは「免疫」ではなく「細胞の中」を壊す ― 髪が抜ける前に、体の中で起きていること ―

武本 重毅

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円形脱毛症の患者さんから、よくこんな声を聞きます。

「仕事や家庭で強いストレスがあったあとに、突然抜けました」

「疲れが限界だった時期と重なっています」

これは、決して気のせいではありません。

近年の研究から、ストレスはまず“免疫”ではなく、

毛根の細胞そのものに強い影響を与える
ことが分かってきました。

私たちがストレスを感じると、体の中では

自律神経(特に交感神経)が活発になります。

すると、心拍数や血圧が上がるだけでなく、

細胞の中のエネルギー代謝にも負担がかかります。

毛根は、実はとてもエネルギーを必要とする組織です。

髪の毛を作るために、細胞は常に分裂し、

大量のエネルギーを消費しています。

そのエネルギーを生み出しているのが、

細胞の中にあるミトコンドリアです。

ミトコンドリアは、いわば細胞の発電所です。

強いストレスや疲労が続くと、

この発電所に無理がかかり、

エネルギー不足やダメージが起こりやすくなります。

すると細胞は、

「うまく働けない」「壊れそうだ」

という状態に追い込まれます。

この段階では、

まだ免疫は“攻撃”していません。

最初に起きているのは、毛根の細胞の弱体化です。

問題は、この弱った細胞が

「異常が起きている」というサイン

外に出してしまうことです。

免疫は本来、

感染や危険を見つけるための仕組みです。

そのため、このサインを

「敵がいるのでは?」と誤解してしまいます。

こうして初めて、

免疫が毛根の周囲に集まり、

結果として円形脱毛症という形で表に出てくるのです。

つまり――

ストレス → 細胞の中のエネルギー破綻 → 免疫の誤作動

という順番で、物事は進んでいると考えられます。

次回は、

免疫は本当に“悪者”なのか?

という視点から、

円形脱毛症の正体にさらに迫っていきます。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。