Director's blog
院長日記

「糖尿病=ミトコンドリア病」連載 第1回 ― なぜ“血糖を下げるだけ”では足りないのか

武本 重毅

カテゴリー: 

糖尿病は、長いあいだ
「血糖値が高くなる病気」として説明されてきました。

そのため治療の目的も、

  • 血糖値を下げる
  • 食事量を減らす
  • 余分な糖を体の外に出す

といった方向に集約されてきました。
これらは間違いではありません。実際、多くの患者さんを救ってきました。

しかし近年、医療現場ではこんな“違和感”が共有されるようになっています。

血糖値は改善している。
けれど、患者さんは元気になっていない。

疲れやすい、体力が戻らない、
以前より老けた感じがする、回復実感が乏しい――
こうした声は決して珍しくありません。

この違和感を説明する鍵が、
ミトコンドリアです。

ミトコンドリアとは何か

ミトコンドリアは、細胞の中にある
エネルギーを生み出す装置です。

人は生きるために、

  • 筋肉を動かす
  • 脳で考える
  • 体温を保つ
  • 血糖や脂肪を処理する

といった活動を絶えず行っています。
そのエネルギーのほぼすべてを担っているのが、ミトコンドリアです。

つまり――
ミトコンドリアが元気でなければ、体は元気になれない。

これはとても単純で、しかし見落とされがちな事実です。

糖尿病を「エネルギーの病気」として見る

糖尿病をミトコンドリアの視点で見ると、
まったく違う風景が見えてきます。

血糖値が高い状態とは、
「糖が多すぎる」というよりも、

糖をエネルギーとして使いきれなくなった状態

と考えることができます。

インスリンがあっても、
細胞側のミトコンドリアが十分に働いていなければ、
糖はうまく処理されません。

その結果として、

  • 血糖が上がる
  • 脂肪として蓄積される
  • 慢性的な炎症が起こる

といった現象が連鎖的に起こります。

血糖値は、
原因ではなく「結果」として現れているにすぎないのです。

なぜ「数値は良いのに、つらい」のか

血糖値を下げる治療は、
例えるなら「渋滞している道路の交通整理」に似ています。

確かに、車の流れは一時的に改善します。
しかし、道路そのものが傷んでいれば、
渋滞は何度でも繰り返されます。

この“道路”にあたるのが、
ミトコンドリアによるエネルギー処理能力です。

ここが回復していない限り、
数値が良くても、体は本当の意味で楽になりません。

連載で伝えていきたいこと

この連載では、
糖尿病を

「血糖の病気」ではなく
「ミトコンドリアの病気」

として捉え直します。

次回以降は、

  • なぜミトコンドリアが弱るのか
  • なぜ年齢とともに糖尿病が増えるのか
  • 既存治療薬はミトコンドリアとどう関係するのか
  • ミトコンドリアを整えるとはどういうことか

を、専門用語をできるだけ使わずに解説していきます。

糖尿病治療は、
「我慢する医療」から
「身体の力を取り戻す医療」へ。

その地図を、ここから一緒に読み解いていきましょう。

次回予告(第2回)

「インスリン抵抗性の正体
― なぜ細胞は“受け取れなくなる”のか」

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。