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院長日記

「糖尿病=ミトコンドリア病」連載 第2回 ― インスリン抵抗性の正体 なぜ細胞は“受け取れなくなる”のか

武本 重毅

糖尿病の説明で、必ず出てくる言葉があります。
「インスリン抵抗性」です。

一般には、
「インスリンが効きにくくなる状態」
と説明されます。

しかし、ここで一つ疑問が生まれます。

インスリンはちゃんと出ているのに、
なぜ細胞は“反応しなくなる”のでしょうか。

その答えは、
受容体やホルモンの問題だけではありません。
細胞の中のエネルギー状態にあります。

インスリンは「命令」ではなく「許可」

インスリンはよく、
「血糖を下げるホルモン」と説明されます。

しかし、もう少し正確に言うと、
インスリンは――

「エネルギーを使っていいですよ」
という“許可シグナル”

です。

糖(ブドウ糖)は、
細胞にとっては燃料です。

ところが、
ミトコンドリアが弱っている細胞にとって、
燃料は必ずしも“ありがたいもの”ではありません。

ミトコンドリアが弱ると、何が起きるか

ミトコンドリアの働きが低下すると、

  • エネルギーをうまく作れない
  • 脂肪酸が途中で詰まる
  • 活性酸素が増えやすくなる

といった状態が起こります。

このとき細胞は、
これ以上エネルギー基質が流れ込むと
かえって危険だと判断します。

その結果、

インスリンの「許可」を
あえて受け取らなくなる

これが、
インスリン抵抗性の本質です。

つまり細胞は、
怠けているのでも、壊れているのでもなく、
自分を守るために“拒否”しているのです。

なぜ脂肪・炎症・高血糖がつながるのか

ミトコンドリアが回らない状態では、

  • 糖は使われずに血中に残る
  • 脂肪として蓄積される
  • 脂肪由来の炎症シグナルが増える

という悪循環が生まれます。

ここで重要なのは、
炎症が原因でインスリン抵抗性になるのではなく、
ミトコンドリア不全が、炎症と抵抗性の両方を生む

という点です。

血糖値・脂肪・炎症は、
すべて同じ根っこから枝分かれしている現象なのです。

なぜ薬を増やしても苦しくなることがあるのか

インスリンを増やしたり、
血糖を無理に下げたりすると、
数値は一時的に改善します。

しかし、
ミトコンドリアが回らないまま
「使えない燃料」を押し込めば、

  • だるさ
  • 低血糖様症状
  • 体重増加
  • 易疲労感

が起こりやすくなります。

これは治療の失敗ではなく、
順番の問題です。

本当に必要なのは「受け取れる細胞」をつくること

インスリン抵抗性を改善するとは、

  • インスリンを増やすことでも
  • 無理に血糖を下げることでもなく

細胞が「受け取っても大丈夫」な
エネルギー状態に戻ること

です。

その中心にあるのが、
ミトコンドリアの回復です。

第2回のまとめ

  • インスリン抵抗性は
    細胞の防御反応
  • 原因はホルモン不足ではなく
    ミトコンドリア不全
  • 治療の本質は
    「押し込む」ことではなく
    「受け取れる状態を作る」こと

次回予告(第3回)

「なぜ年齢とともに糖尿病が増えるのか
― 老化とミトコンドリアの深い関係」

(老化・疲労・糖尿病が一本でつながります)

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。