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院長日記

「糖尿病=ミトコンドリア病」連載 第3回 ― なぜ年齢とともに糖尿病は増えるのか 老化とミトコンドリアの深い関係

武本 重毅

「若いころは何を食べても平気だったのに、
年齢とともに血糖値が上がってきた」

これは多くの方が実感する変化です。
実際、糖尿病は加齢とともに増える病気です。

しかしここで一つ、
とても重要な問いがあります。

なぜ“年をとるだけ”で、
血糖の病気が増えるのでしょうか。

答えは、
膵臓でも、食事量でもなく、
ミトコンドリアの老化にあります。

老化とは「エネルギーが作れなくなること」

老化というと、
シワや白髪、筋力低下を思い浮かべがちですが、
その本質はもっとシンプルです。

エネルギーを作る力が、
少しずつ落ちていくこと

年齢とともに、ミトコンドリアは

  • 数が減る
  • 動きが鈍くなる
  • エネルギー効率が落ちる

という変化を起こします。

すると、同じ食事・同じ生活でも、
体は以前のように糖や脂肪を
うまく処理できなくなります。

これが、
「年齢とともに血糖が上がりやすくなる」
本当の理由
です。

加齢による変化は、膵臓より先に起きている

「年をとるとインスリンが出なくなる」
と思われがちですが、実際には違います。

多くの場合、

  1. 先にミトコンドリアが弱る
  2. 糖を使いきれなくなる
  3. インスリン抵抗性が生まれる
  4. それを補おうとしてインスリン分泌が増える
  5. 最後に膵臓が疲弊する

という順番で進みます。

つまり糖尿病は、
老化の“結果”として現れる病態なのです。

筋肉が減ると、なぜ血糖が上がるのか

年齢とともに起こる変化の一つに、
筋肉量の低下(サルコペニア)があります。

筋肉は、
体の中で最大の「糖の処理工場」です。

そして筋肉の中でも、
実際に糖を燃やしているのは――
ミトコンドリアです。

筋肉量が減り、
ミトコンドリアの数と質が落ちると、

  • 血糖を処理できる場所が減る
  • 余った糖が血中に残る

結果として、
糖尿病が進行しやすくなります。

これは「食べすぎ」ではなく、
使えなくなった”ことによる血糖上昇です。

なぜ高齢になるほど治療が難しくなるのか

高齢になるほど、
血糖コントロールが難しくなるのは自然なことです。

それは、

  • ミトコンドリアの予備力が少ない
  • 無理な治療が疲労や低血糖につながりやすい

からです。

だからこそ、高齢期の糖尿病治療では、

「どこまで下げるか」より
「どう元気を保つか」

が重要になります。

老化を止めることはできない。でも…

年をとること自体は止められません。
しかし、

老化のスピードを緩めること
エネルギー低下を食い止めること

は可能です。

その中心にあるのが、
ミトコンドリアをいたわり、
回し続けるという発想です。

糖尿病治療は、
若い人の病気を治す医療ではなく、
老化と共に歩く医療へと
変わりつつあります。

第3回のまとめ

  • 糖尿病は
    老化の延長線上にある病態
  • 加齢で最初に弱るのは
    ミトコンドリア
  • 血糖上昇は
    「食べすぎ」ではなく
    「使えなくなった結果」
  • 高齢期治療のゴールは
    数値より生活の質

次回予告(第4回)

「血糖を下げても治らない理由
― なぜ“エネルギー視点”が必要なのか」

GLP-1やSGLT2が
「どこに効いて、どこに効かないのか」を
ミトコンドリアから整理します。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。