Director's blog
院長日記

「糖尿病=ミトコンドリア病」連載 第6回 ― 薬は敵ではない ミトコンドリアから見た「薬の本当の役割」

武本 重毅

カテゴリー: 

「ミトコンドリアが大事なのは分かった。
でも、薬はどうなるのですか?」

これは、とても自然な疑問です。
結論から言えば――

薬は敵ではありません。
ただし“主役”でもありません。

ミトコンドリア医学の視点では、
薬の役割が少し違って見えてきます。

薬は「押し込む力」ではなく「支える力」

従来、薬は
「血糖を下げる力」
として語られてきました。

しかしミトコンドリアの視点では、
薬はこう捉え直すことができます。

  • 体が処理しきれない負荷を減らす
  • エネルギーの無駄遣いを防ぐ
  • ミトコンドリアが回る“余地”をつくる

つまり薬は、
前に進ませるエンジンではなく、
転ばないように支える補助輪なのです。

食欲を抑える薬の本当の意味

食欲を抑える薬は、
「食べる量を減らす薬」
と思われがちです。

しかし実際には、
ミトコンドリアの過労を防ぐ役割
を担っています。

処理能力が落ちているときに
大量の燃料が流れ込めば、
エネルギー工場はさらに疲弊します。

食欲を静めることは、
「我慢」ではなく
回復のための減速なのです。

余分な糖を外に出す薬の意味

糖を体の外に出す薬は、
「もったいない」と感じられることもあります。

しかしミトコンドリアの視点では、
これは安全弁です。

処理しきれない糖が
体内にあふれ続けるより、
一部を外に逃がすことで
全体の負荷を下げる。

それにより、
ミトコンドリアは
再び回り始める余地を得ます。

インスリンは「最後の悪者」ではない

インスリン治療に対して、
抵抗感を持つ方は少なくありません。

しかしインスリンは、
体を壊すホルモンではありません。

問題は、
ミトコンドリアが回らない状態で
大量に使われること
です。

順番が整い、
エネルギーを使える体になった上で使うインスリンは、
身体にとってとても生理的な支援になります。

なぜ「順番」がすべてなのか

同じ薬でも、

  • ミトコンドリアが疲弊した状態
  • ミトコンドリアが回り始めた状態

では、
効き方も、つらさも、結果もまったく違います。

薬が効かないのではなく、
受け取る準備が整っていない
だけのことも多いのです。

薬を“減らす”のがゴールではない

ミトコンドリア医学のゴールは、
薬をやめることではありません。

必要な薬を、
必要な量で、
無理なく使える体になること

それが結果として
減薬につながることはありますが、
それは目的ではなく“結果”です。

第6回のまとめ

  • 薬は
    ミトコンドリアを助ける補助輪
  • 抑える薬は
    過労を防ぐブレーキ
  • 捨てる薬は
    安全弁
  • インスリンは
    順番次第で味方になる
  • 問題は薬ではなく
    使われるタイミング

次回予告(第7回・最終回)

「糖尿病治療のゴールが変わる
― 数値から“生き方”へ」

血糖値の先にある、
本当の健康とは何か。
この連載の総まとめをお届けします。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。