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院長日記

免疫療法が効かない理由【第2回】がんは免疫細胞の「発電所」を奪う ― ミトコンドリアから見えてきた、がん免疫の新しい真実 ―

武本 重毅

がんは「免疫をだます」だけではなかった

これまで、がん細胞は

  • 免疫チェックポイント(PD-L1)で姿を隠す
  • 免疫細胞のブレーキを踏ませる

といった方法で免疫から逃げていると考えられてきました。

しかし2026年、
スタンフォード大学医学部
の研究チームが、さらに衝撃的な事実を報告しました。

👉 がん細胞は、免疫細胞からミトコンドリアそのものを奪っていたのです。

ミトコンドリア=免疫細胞の「発電所」

ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーを生み出す
いわば 発電所 のような存在です。

免疫細胞(T細胞・NK細胞)が

  • がんを見つけ
  • 攻撃し
  • 戦い続ける

ためには、この発電所が不可欠です。

がん細胞の恐るべき戦略

研究では、がん細胞が

  • 免疫細胞から ミトコンドリアを物理的に奪い
  • その結果
    • 免疫細胞はエネルギー切れで戦えなくなる
    • がん細胞は PD-L1やMHC-Iを操作して完全に姿を偽装
  • 免疫細胞が集まる リンパ節へ堂々と転移

することが示されました。

これは例えるなら、

敵が防衛軍の発電所を破壊し、
司令部(リンパ節)に居座るようなもの

です。

驚くべき事実:目的はエネルギーではなかった

さらに重要なのはここです。

奪われたミトコンドリアは
👉 エネルギー(ATP)を作れなくてもよかった

がん細胞が本当に欲しかったのは、

  • ミトコンドリアを使った 免疫シグナルの攪乱
  • インターフェロン経路を逆利用した 免疫回避プログラム

つまり、

🟥 ミトコンドリアは「発電所」以上に
🟥 「免疫の司令塔」だった

という事実が明確になったのです。

この研究は
Cell Metabolism
に掲載されました。

ここで重要になる「アンチエイジング三本の矢

この発見は、先生が提唱されてきた
アンチエイジング三本の矢の意義を、別次元で照らします。

① NMN

→ 免疫細胞のNAD⁺を回復
→ ミトコンドリアの「稼働力」を維持
奪われにくい・疲弊しにくい免疫細胞へ

② 5-ALA

→ 電子伝達系とヘム代謝を支える
→ ミトコンドリアの「構造と秩序」を守る
がんに操作されにくい免疫環境を維持

水素吸入

→ ミトコンドリアDNAを傷つける有害ROSを選択的に除去
→ 免疫細胞の誤作動・疲弊を防ぐ
免疫の暴走も沈黙も防ぐ“調律役”

これは「がん治療」ではなく「免疫の土台づくり」

大切な点として、当院の取り組みは

❌ がんを直接治す治療
ではありません。

免疫細胞が本来の力を発揮できる環境を整える
がんに“奪われない体内条件”をつくる

という、基盤医療・予防医療の考え方です。

まとめ

  • がんは免疫細胞のミトコンドリアを奪い、免疫を無力化する
  • ミトコンドリアは「エネルギー」以上に「免疫制御装置」だった
  • アンチエイジング三本の矢
    この奪取戦略に“正面から対抗し得る思想”を持つ

老化・免疫・がんは、
すべて ミトコンドリアでつながっている。

この事実が、いま世界の最前線で証明され始めています。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。