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院長日記

免疫療法が効かない理由【第1回】 免疫療法が効かないのは 「免疫細胞が疲れているから」

期待された「免疫療法」という革命

近年、がん治療において
免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)
「がん治療の革命」と呼ばれてきました。

がん細胞に直接攻撃を加えるのではなく、
免疫細胞自身の力を引き出すという発想は、
従来の治療とはまったく異なるものでした。

実際、免疫療法によって

  • がんが消失した
  • 長期間再発しない

という患者さんがいることも事実です。

それでも「効かない人」が多い現実

一方で、臨床の現場では
免疫療法が効かない患者さんが半数以上
という現実もあります。

ここで、多くの患者さんが
こう疑問に思われます。

「免疫のブレーキを外したのに、
なぜ免疫はがんを攻撃してくれないのか?」

「免疫細胞が疲れている」という説明

これまで、この疑問に対する答えとして
よく使われてきた言葉があります。

それが
「免疫細胞の疲弊(exhaustion)」
です。

長期間がんと戦い続けた結果、

  • 免疫細胞が疲れ切ってしまった
  • もう戦う力が残っていない

という説明です。

確かに、これは一部正しい。
しかし、私はここに
大きな違和感を覚えてきました。

疲れているなら、なぜ回復しないのか

私たちは日常生活でも、

  • 体が疲れたら休めば回復する
  • 栄養をとれば元気を取り戻す

という経験をしています。

では、なぜ免疫細胞は
ブレーキを外しても
回復できないのでしょうか。

答えは単なる「疲れ」ではありません。

免疫細胞は「エネルギーが枯渇」している

免疫細胞、特に
T細胞は、がんを攻撃する際に
膨大なエネルギーを必要とします。

  • 標的を見つけ
  • 活性化し
  • 分裂し
  • 攻撃物質を作り続ける

これは、短距離走ではなく
マラソンのような戦いです。

そのエネルギーを生み出しているのが
細胞内の小器官
ミトコンドリアです。

ミトコンドリアが壊れると何が起きるか

ミトコンドリアが正常に働かないと、

  • ATP(エネルギー)が作れない
  • 免疫細胞は動けない
  • 攻撃力が出ない

つまり、

免疫細胞は存在していても、
戦えない状態になる

のです。

これは「疲れている」のではなく、
エンジンが壊れている状態に近い。

免疫療法は「ブレーキ解除」にすぎない

免疫チェックポイント阻害薬は、
免疫細胞にかかっている
ブレーキを外す薬です。

しかし、

  • エンジン(ミトコンドリア)が壊れている
  • 燃料も作れない

状態で、ブレーキだけ外しても
車は前に進みません。

臨床で見えてきた共通点

免疫療法が効かなかった患者さんの
免疫細胞を詳しく調べると、

  • ミトコンドリアの数が少ない
  • 形が崩れている
  • エネルギー産生能力が低い

といった共通点が見えてきます。

つまり、

免疫療法が効かない理由の第一段階は、
免疫細胞が“疲れている”のではなく、
“エネルギーを作れなくなっている”こと

なのです。

ここから何が見えてくるのか

この事実は、がん治療の考え方を
大きく変えます。

  • 免疫を「刺激する」だけでは不十分
  • 免疫が戦える土台を整えなければならない

その土台こそが
ミトコンドリアです。

次回予告

次回【第2回】では、
さらに衝撃的な事実をお伝えします。

がん細胞は、
免疫細胞が弱ったのを待っていたのではなく、
意図的に“弱らせていた”可能性がある

という話です。

がんは、免疫をだます前に
免疫のエネルギー源を奪っていた

最新研究をもとに、
詳しく解説します。

がんは “ミトコンドリアを使って” 進化していた

がん細胞はなぜミトコンドリアを“送り込む”のか ①

がん細胞はなぜミトコンドリアを“送り込む”のか ②

がん細胞はなぜミトコンドリアを“送り込む”のか ③

がん細胞はなぜミトコンドリアを“送り込む”のか ④

がん細胞はなぜミトコンドリアを“送り込む”のか ⑤

がん細胞はなぜミトコンドリアを“送り込む”のか ⑥

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。