加齢と食欲の変化 (公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット)
最近、色々考えているのは「認知症で寝たきりの超高齢者」への対応ですので、その部分のみ引用・追記してみます。
加齢による食欲の変化の原因
加齢に伴う食欲の変化の原因として以下があります。
1. 運動量や筋肉量の低下
寝たきりの生活ですので、お腹が空かず、エネルギーの必要量も減ります。
2. 心因性による食欲低下
高齢者になると、家族や友人の死別による孤独感、施設や病院への入院などによる環境の変化、生きがいや、生きる気力がなくなるなどから食欲が低下することがあります。現在、高齢者の孤食が問題となっていますが、一人の食事は楽しくなく、美味しさも半減してしまい、結果的に食欲低下になってしまいます。
3. 認知症による食欲の変化
認知症になると脳の機能が低下するため、摂食をつかさどる機能のバランスが崩れてしまいます。認知症により、食べ物を食べ物と判断できなくなることもあります。
4. 内臓機能の低下
胃腸の働きが低下し、消化吸収の能力が低下し、消化不良や下痢をしやすくなります。また腸の働きも鈍くなるので、便秘を引き起こし、食欲がわかないことがあります。
5. 味覚、嗅覚の低下
高齢者になると味を感じる細胞の数が減り、塩味や甘味を感じにくくなってしまいます。そのため濃い味を好むようになりますが、高血圧の方は減塩にすると、味を感じられず、食事が進まなくなることがあります。食べ物の匂いがあることにより、食事の味もさらに美味しく感じますが、嗅覚の低下により、さらに味が感じにくくなってしまいます。
また、義歯の調子や誤嚥を経験すると、食べることが苦となってしまい、肉や魚、繊維質の多い野菜の摂取量が減ってきます。それにより、亜鉛などのミネラルの不足になるため、さらに味覚障害を引き起こしてしまいます。また服薬によっても味覚障害を起こします。
また食べ物の好みが変わるので、今まで食べていたものを食べなくなってしまうことがあります。
6. 視覚の低下
高齢者になると白内障が原因で食べ物の色が、黄色味に見えてしまうため、鮮やかな色がわかりにくく、それにより食べ物の色による美味しさが失われてしまいます。
また老化に伴い、物が見えにくくなるので、中が白いお茶碗に、白いご飯やお粥を入れても、はっきりと見えないので、食べにくく、残してしまうことがあります。
7. 口腔の状態
咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)の低下で、誤嚥を引き起こしてしまうと、食べることへの不安や楽しく食べられないことから、食欲低下を招きます。また唾液の分泌量が低下するので、味を感じにくい、食べ物をうまくまとめられない、パサパサしたものは食べにくくもなります。
義歯の調子が悪いと、上手に食事ができないため、食事を楽しむことができません。
認知症で寝たきりの超高齢者の方々を介護施設で回診していますが、生命力の源は口から美味しく食べることだと思います。人間の欲望の中で、最後まで機能的に残されているものこそが「食欲」です。この「食欲」をいかに満足させてあげられるかを工夫できれば、みなさんの人生の終焉を満足したものにできるのではないでしょうか。