ステロイド療法中のインフルエンザ予防接種
ステロイド内服治療を受けている女性がインフルエンザ予防接種を受けにきました。内容をみると、内服量を漸減して、まだプレドニン20mg/日を内服中です。
ステロイドは、免疫反応を低下させるため、アレルギーや膠原病の治療薬として用いられます。リンパ系腫瘍の治療薬としても他の抗がん剤と一緒に投与されます。ただし、免疫力低下による易感染性、代謝作用による糖尿病・高脂血症・肥満、高血圧、骨粗鬆症、胃粘膜障害、不眠やうつなどの精神症状という副作用に注意しながら、ステロイド療法はおこなわれなければなりません。
ステロイド療法中に、生ワクチンは副作用が強くでるためもちろん接種できませんが、不活化ワクチンはどうなのでしょう。副作用の点からいえば、特に問題ありません。しかしながら、ワクチンとしての効果はいかがなものでしょうか。ワクチンが届ける情報が免疫系細胞に十分に伝わりインフルエンザウイルスに対する抗体を産生されるという過程を、ステロイドが抑制してしまうと考えられます。特にステロイド投与量として、プレドニン20mg/日内服している状態では、ワクチンの効果は期待できないと考えてよいでしょう。
その一方で、ステロイド内服治療中の免疫抑制状態というのは、インフルエンザウイルスに感染しやすい状態にあるともいえます。ステロイド内服治療は、急にやめるとリバウンドにより症状が悪化してしまいますので、徐々に投与量を減らしていく、つまり漸減していく必要があります。プレドニン量として何mgまで減らせばワクチン接種の効果が通常のレベルまで期待できるのか、悩ましいところですが、文献など調べてみますと、5mg/日の状態ではワクチン接種が推奨されているようです。