Director's blog
院長日記

時間は進んでも、生物学的な年齢はほとんど進まなかった

80歳代の患者さんを継続して調べる中で見えてきたこと

私たちは現在、老化を単なる「年齢の積み重ね」としてではなく、身体の回復力や細胞の状態の変化として捉える取り組みを進めています。

その評価に用いている検査の一つが、DNAメチル化の状態から生物学的年齢を推定するエピクロック®テストです。

今回、80歳代の患者さんについて、約1年の間隔をあけて継続的に検査を行いました。

その結果、暦年齢は当然ながら約1歳進んでいましたが、生物学的年齢はほぼ変化せず、実年齢より約10歳若い状態が引き続き確認されました。2025年の検査では、暦年齢81.3歳に対して生物学的年齢71.4歳、エイジギャップは−9.9歳でした。

約1年後の検査でも、非常に良好なエイジギャップが維持されていました。

私たちが注目しているのは「何歳若いか」だけではありません

数字だけを見ると、「約10歳若い」という点が目を引きます。

しかし、私たちが本当に注目しているのは、単回の良い結果ではありません。

重要なのは、

暦年齢が進んでも、生物学的な状態が大きく崩れずに維持されていたこと

です。

老化が単純に時間だけで決まるのであれば、暦年齢が1歳進めば、生物学的年齢も同じように進むはずです。

しかし実際には、人によってその進み方は異なります。

睡眠、運動、食事、ストレス、炎症、代謝、免疫、ミトコンドリア機能など、多くの要因が複雑に関係していると考えられます。

老化は一つの数字だけでは評価できません

今回の検査では、生物学的年齢だけでなく、老化スピードや運動機能、炎症、血管、腎臓、免疫などに関連する複数の指標も評価しています。

興味深いことに、すべての指標が同じ方向に動いたわけではありません。

非常に良好な状態を維持していた項目がある一方で、今後も注意深く見ていくべき項目も残っていました。

このことは、

「生物学的年齢が若ければ、すべてが完璧」というわけではない

ことを示しています。

老化は、単一の臓器や一つの検査値で決まるものではなく、身体全体のネットワークとして捉える必要があります。

私たちが目指しているのは「若返り」ではなく「回復医療」です

私たちは、このような結果をすぐに「若返り」と表現することには慎重でありたいと考えています。

一人の患者さんの経過だけで、特定の治療効果や因果関係を結論づけることはできません。

また、どの介入がどの程度影響したのかも、現時点では明らかではありません。

それでも、継続的な取り組みの中で、80歳を超えても良好な生物学的状態が維持されていたことは、今後さらに研究する価値のある重要な観察結果です。

私たちが目指しているのは、時間を巻き戻すことではありません。

目指しているのは、

時間が進んでも、身体が回復できる状態を保つこと

です。

これを私たちは、

Recovery Medicine

回復医療

と呼んでいます。

今後について

現在、このような継続データを慎重に整理し、今後の研究や学会発表につなげる準備を進めています。

現時点では症例レベルの観察結果であり、医学的な結論を示すものではありません。

今後、同様の評価を複数の方で継続し、

  • 生物学的年齢
  • 老化スピード
  • 炎症関連指標
  • 身体機能
  • ミトコンドリア関連指標

などを組み合わせて検証していく必要があります。

私たちはこれからも、数字を大きく見せるのではなく、科学的に慎重に、再現性を確かめながら研究を進めていきます。

MITO RISING Perspective

Aging is not time.

老化とは、単なる時間の経過ではありません。

老化とは、身体が本来持つ回復力が少しずつ失われていくことです。

そして、回復力を維持できれば、時間が進んでも、生物学的な老化を穏やかにできる可能性があります。

今回の結果は、その可能性を考えるうえで、非常に興味深い一例です。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。