Director's blog
院長日記

行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

武本 重毅

カテゴリー: 

予想どおりに不合理 (ダン・アリエリー/熊谷淳子訳)

 

 

この本は

まず彼がやけど病棟に入院したときに

看護師から受けた処置のはなしから

はじまります。

 

事故にあい

病院で過ごす間に

さまざまな種類の痛みをたっぷり経験したからです。

 

 

看護師たちは包帯をつかむと

きまってすばやく一気にはぎとったそうです。

 

これを一時間ばかり繰り返して

すべての包帯をはずします。

 

はずし終えると

体じゅうに軟膏を塗り

新しい包帯をします。

 

これは、看護師たちが

包帯を勢いよく引っぱる鋭い急激な痛みのほうが

ゆっくり引きはがすよりも

(患者にとって)好ましいという

持論を打ちたてていたからだったようなのです。

 

そして

筆者は自身で研究を組み立て

その研究を終えたときには

 

やけど病棟の看護師が

患者の痛みを最小にする正しい方法論を

持っていないことがはっきりしました。

 

特有な先入観が邪魔をして

 

患者の痛みを正しく認識できず

 

どうやらこの先入観は

豊富な経験をもってしても

変えることができないらしいのです。

 

 

筆者は

経験豊富な看護師たちが

これほど患者を気にかけているにもかかわらず

患者にとっての現実を取り違えてしまうのだとしたら

 

ほかの人も同じように自分の行動の結果を取り違えたり

そのせいで、繰り返し判断を誤ったりするのではないかと

考えました。

 

そして

痛みの研究から視野を広げ

 

経験を積んでも

そこから学ぶことなく

失敗を繰り返してしまう状況について

研究しようと決心したそうです。

 

 

この問題を扱えるようにしてくれる学問分野は

「行動経済学」

あるいは

「判断・意思決定科学」といいます。

 

 

この本は

人間の不合理性

つまり

 

わたしたちがどれほど完璧とはほど遠いのか

 

について書いています。

 

 

不合理性を理解することは

毎日の行動と決断に役立ち

 

わたしたちを取り巻く状況や

そこで示される選択肢が

どのようにつくられているかを

理解するうえでも

重要になります。

 

さらに

 

わたしたちは不合理なだけでなく

「予想どおりに不合理」です。

 

つまり

 

不合理性はいつも同じように起こり

何度も繰り返されます。

 

わたしたちが

いかに「予想どおりに不合理」かを知ることは

 

よりよい決断をしたり

生活を改善したりするための

 

出発点になります。

 

 

わたしたちは

 

身のまわりのものを

常にほかのものとの関係でとらえています。

 

すべてが相対的なのです。

 

しかし

 

わたしたちは

ものごとをなんでも比べたがりますが

 

比べやすいものだけを一所懸命に比べて

 

比べにくいものは無視する傾向があります。

 

 

どのようにすればよいのか。

 

 

相対性の連鎖を断ち切りましょう。

 

刷り込み・アンカリングから抜け出しましょう。

 

無料!の呪縛に陥らないようにしましよう。

 

社会規範と市場規範を混同しません。

 

自分が冷静な状態と熱くなった状態を理解しましょう。

 

自分の好きなものと嫌いだけど自分にとってよいものを組み合わせましょう。

 

仮想の所有意識から逃れるために自分が非所有者であるかのように考えましょう。

 

自分に先入観があることを自覚しましょう。

 

無用の選択肢を追い求めたくなる不合理な衝動から自由になりましょう。

 

決断しないことによる影響も考えましょう。

 

肯定的に予測しましょう。

 

そして

 

信用をきれいな空気や水のように貴重な公共財としてとらえましょう。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。