Director's blog
院長日記

 国際医療協力に関する提案(2012年8月13日)  武本 重毅

武本 重毅

今から7~8年前に現在の日本の立ち位置をこのように予想していました。

 

最近の目まぐるしい世界情勢の変化の中、

物質、経済、情報などのグローバル化が進む中、

そのバランスを保ち発展の鍵を握るのはやはりヒトです。

 

私共は、

特に医療分野において世界的な舞台で活躍できるような人物を育てあげ、

それをサポートできるようなネットワークを構築するお手伝いを続けています。

 

その3本の柱が、

①厚生労働省所管JICA(独立行政法人国際協力機構)集団研修「AIDSの予防及び対策」とそれに続く「次の10年に向けてのAIDSの予防及び対策」、

②アフリカ向け第三国研修技術協力の実施に係る在外技術研修講師業務、専門家としてのエジプト・アラブ共和国派遣、

③国立病院機構熊本医療センターとタイ国コンケン病院との国際協力、姉妹協定締結です。

 

高齢化社会を迎えた日本は、

あらゆる領域でその競争力を失い、

また経済状態を回復するだけの生産力、労働力も維持することができなくなってきました。

 

さらにその高齢者をターゲットとした介護医療へ力を注ぎ過ぎるあまり、

将来への発展性を期待できるような医療からはだんだん遠ざかってきているのかもしれません(負のスパイラル)。

 

またヒトレトロウイルス感染症の予防に関しては、

治療の進歩に伴い感染者数は増加しており、

他の国々(特に隣国)の動向によっては

近い将来に爆発的な感染拡大が危惧されます。

 

このような中で、

これからの世界情勢(経済、平和なども含めて)に大きな影響を与えるのが

ヒト、

特に医療従事者のグローバル化であると信じています。

 

国際医療協力を行うことにより、

国内医療施設だけでなく、

海外医療施設での患者と家族への「良い診療」を学ぶ機会が病院スタッフに生まれ、

また海外からの研修員をサポートする者にとっても自分の能力を向上させる機会となり、

それが日本の学生教育にもよい効果をもたらし、

終には患者と家族が満足できるような

「良い医療」を提供するための正のスパイラルへと変わっていくのではないでしょうか。

 

 

その中で、

確かに「第三国研修の立ち上げ」をサポートするということは大変有意義な企画になると思います。

これまでの他分野でのJICAの取組みと同様に、

発展途上国と近隣の国々が独立して「AIDS予防と対策」を進めていけるように、

手助けして後のフォローも毎年行う。

これが本筋かもしれません。

 

私の個人的な予測ですが、

今の世界経済の落ち込みは長期に続くと思われます。

 

おそらく今後15年くらいになる見込みです。

 

そうなると

当然日本の立ち位置も変わってまいります。

 

これまでは経済発展に支えられ

海外からの研修生を受け入れ

指導するという「余力」があったわけですが、

 

少子高齢化が進み

国内産業に従事する労働力を確保する必要があること、

 

エネルギー対策のための節電など

国内での研修環境が悪化すること、

 

さらに1昨年前の私たちの研修員はたまたま難を逃れたのですが

今後自然災害に遭遇する危険性が特定の地域で高いこと等、

 

日本で研修を行うこと自体が問題視されるときが来るかもしれません。

 

実際に、

もし平成20年度の「AIDSの予防及び対策」コース研修員の

東京から京都への移動が一日遅れていたら、

全てが終わっていたかもしれません。

 

このようなヒヤリハットの事例を経験した以上、

大事故が起こることは容易に予測できます。

 

しかし、逆に考えると、

上記のように坂を転げ落ち始めた日本を支えてくれるのは、

我々が精神誠意を込めてサポートした研修員たちと、

その評判を聞いた周りの人々かもしれません。

 

先に述べた少子高齢化が進むことにより、

多くの産業は

高齢者ができる食品産業、

若者がITを使ってできる流通業など、

いくつかに偏った形で運用されていくでしょう。

 

医療に関しても、

団塊の世代が高齢者となり、

その最後までをケアする介護施設の乱立と

介護士・看護師需要が起こっていますが、

これから高齢者の割合がもっと増えれば、

マンパワー不足から

その施設自体の運用が困難となり、

いつか破綻するでしょう。

 

あるいは年金問題や増税により、

施設に入居できない高齢者数が増え、

施設利用者が減り始めたときから、

経営は行き詰るでしょう。

 

その様な状況の中、

日本人だけでは手が行き届かない部分を、

補い助けてくれるのは、

これまでJICAがサポートしてきた外国人たちしか考えられません。

 

日本の高齢化、弱体化など、

実際の状況を目の当りにした研究員たちは、

自国に帰り現在の先進国が抱えている経済問題や医療問題と

同じ過ちが起きないよう、

自国の体制を整えるでしょうし、

我が日本に手を差し伸べてくれる国も出てくることが期待されます。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。