カリウムの話題その2:こむら返りと漢方薬との関係
今日は
こむら返りで悩んでいる患者さんが来院しました。
ご存知の方々も多いと思いますが
漢方薬で
こむら返りに効くものといえば
芍薬甘草湯です。
ところが2週間内服してみても
あまり効果がみられないようです。
そこで昨日に続き
カリウムのお話です。
カリウムの役割と低カリウム血症
カリウムは、体内に存在する量がもっとも多いミネラルです。
生命維持活動の上で欠かせない役割を担っています。
食事により摂取されたカリウムは
小腸で吸収された後全身の組織に運ばれ
大部分が腎臓によって排泄されます。
カリウムの量は
腎臓での再吸収の調節によって維持されており
血中のカリウム濃度は3.6~5.0mEq/Lに保たれています。
カリウムは
ナトリウムとともに
細胞の浸透圧の維持
酸・塩基平衡の維持
神経刺激の伝達
心臓機能や筋肉機能の調節
細胞内の酵素反応の調節
などの働きをしています。
また
腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して
尿中への排泄を促進するため
血圧を下げる効果があります。
神経系への影響
身体は約60兆個もの細胞の集合体です。
それらはすべて細胞外からの情報を時々刻々受け入れ
その情報に応じて応答し機能しています。
それらの細胞が連携することで
個体として機能することができます。
個体を構成する細胞、器官、組織の活動を
全体としてまとまりのある働きにし
生体機能の調節役を務めている
その一つが、神経系です。
神経系では
神経線維上は速い電気現象によって
神経と神経の間隙および神経と効果器の間隙の情報は化学伝達物質によって
中枢から末梢へ、末梢から中枢への情報伝達がすばやく行われています。
神経細胞や筋細胞の膜は
刺激に応じて活動電位を発生します。
このような電位変化(活動電位)は
細胞膜を介するイオン透過性の変化です。
低カリウム血症
体内のカリウムの98%は細胞内
残りの約2%が血液中など細胞外にあります。
血液中のカリウム濃度はとても重要で
この値が乱れると全身に重大な障害が生じることがあります。
通常、血液中のカリウム濃度(正常)は3.5〜5.0mEq/Lの範囲内にあり
3.5mEq/L以下に低下した状態を低カリウム血症といいます。
カリウムの役割には
体液の浸透圧調整
筋肉の収縮
神経伝達
などがあります。
したがって、低カリウム血症では
消化管や筋肉、腎臓、神経系に障害を受けやすくなります。
筋力低下や筋肉痛
悪心、嘔吐
便秘
痙攣
などの諸症状から
重度になると
四肢麻痺や自律神経失調
筋肉痙攣
呼吸筋麻痺
不整脈
麻痺性腸閉塞などに至ります。
低カリウム血症が起こる主な原因は
(1)カリウムの摂取量が少ない
(2)体外に出ていくカリウムの量が多い
(3)血液中から細胞内にカリウムが取り込まれてしまう
という3つが挙げられます。
カリウムは普通の食事で欠乏する事はありません。
これから迎える夏に注意すべき脱水症では
低カリウム血症により細胞が脱水状態になります。
それは
夏場に大量の汗をかき
カリウムが汗とともに失われてしまうため
と考えられています。
薬による低カリウム血症:そのひとつ偽アルドステロン症
最近では漢方薬で治療する機会も増えました。
アレルギーの患者さんに小青竜湯
風邪の患者さんに葛根湯
胃もたれ・胸焼けの患者さんに六君子湯
そして
こむら返りの患者さんに芍薬甘草湯など。
実は
これらの医薬品によって
血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにも関わらず
高血圧、むくみ、カリウム喪失などの症状が
引き起こされる場合があります。
主に甘草やその主成分であるグリチルリチンを含む
漢方薬、かぜ薬、胃腸薬、肝臓治療薬でみられることがあります。
手足のだるさ
しびれ
つっぱり感
こわばり
こむら返り
筋肉痛
が現れたら
放置せずに医師・薬剤師に相談してください。