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院長日記

わかりにくい高齢者の脱水

武本 重毅

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脱水症は

体液の量が正常範囲を超えて減少した状態です。

 

正常の体液量は

小児で体重の約 70%

成人男性で約60%

成人女性で約50%

高齢者で約50%

と言われています。

 

 

体液は

主に筋肉に存在し

脂肪にはほとんど存在しません。

そのため、脂肪の多い肥満の方は

標準的な体型の方よりも

体重に対する体液量の割合は低くなります。

また、高齢者では

加齢による筋肉量の減少に伴い体液量が低下します。

 

 

成人では

脱水症により細胞外液が喪失しても

すぐに細胞内液から体液が移動して細胞外液を補正しますが

細胞内液が少ない高齢者では

脱水症に陥りやすくなります。

 

尿や便、汗だけでなく

呼気や粘膜、皮膚から意識しないうちに失われる

不感蒸泄

を考慮しなければなりません。

 

発汗などにより体液喪失が増加する高温状態

不感蒸泄が増加する乾燥状態

という環境には注意が必要です。

 

また、高齢者施設での入浴時にも

発汗などにより相当量の体液を喪失します。

脱水症で出現しやすいのが

消化器筋肉の症状です。

 

脳の水分が枯渇すると

立ちくらみ頭痛集中力低下意識消失

消化器の水分が低下すると

食欲低下悪心下痢便秘

筋肉では

筋肉痛しびれ麻痺こむら返り

などの症状がみられます。

高齢者の場合

皮膚をつまんだ際の戻りの低下

口腔内の乾燥

手足の冷感

などがよく観察されます。

急に元気がなくなる

機嫌が悪い

食欲がない

という様子が観察されます。

さらに

認知機能や記憶力の低下

日中に眠くなるなど生活リズムの変化

突然暴れたり大声を出すといった症状が

出現することがあります。

 

そして

加齢とともに汗腺の機能が低下

脇の下と額にだけ汗をかくようになりますので

正常な高齢者は、脇の下が湿っています。

脇の下が乾燥している高齢者

脱水の進行が疑われます。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。