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院長日記

サル痘の世界的流行:天然痘そしてエイズから私たちは何を学んだのか(後編)

武本 重毅

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私が熊本を拠点とした国際的な感染症対策活動に身を投じていた頃

https://www.health-research.or.jp/library/pdf/forum19/fo19_5_04.pdf

発展途上国では

感染症により

人びとの生活が困窮し

経済が疲弊し

その一方で

いかにして、その問題を解決していったのかを

直に学ぶことができました。

 

エイズはHIV感染により起こる病態です。

西中央アフリカの霊長類が起源であると信じられています。

そして20世紀初めに人間に感染しました。

エイズ患者は1981年に初めてアメリカで見つかりました。

しかし最近の論文では

それよりもっと前にアフリカ大陸から中南米を経由して

アメリカに入ってきていたようです。

 

その後HIV/エイズは

個人だけでなく国の経済へも大きな影響を与えました。

働く人が減少し

その医療に莫大な費用がかかるため

多くの国々で国内総生産(GDP)が低下しました。

 

今やロシアによる侵攻で破壊が進むウクライナ

その隣国であるモルドバからも

熊本で私が企画するエイズ対策の研修に参加していました。

そこで直接耳にしたのは

貧しい生活の中

国境付近で

外国人を相手に稼がなければならない実情でした。

 

タイでは国内での感染者が

性交渉の相手から

家庭内感染へと広がりを見せましたが

コンドームの無料配布という

シンプルですが実に効果的な方法で

国難を食い止めることができました。

 

そして

最も強烈な国家的偉業を成し遂げたのがブラジルでした。

エイズ患者の国内急増で

瀕死の状態となりましたが

国が製薬会社と直接交渉し

当時高価であったエイズ治療薬を

値下げすることに成功し

国民全体が広く

治療の恩恵を受けることができるようになり

国家の滅亡を乗り切ることができました。

 

今ヨーロッパでは

40年前にアメリカでエイズ患者が報告され始めたように

サル痘患者が増え始めました。

エイズのような免疫不全を起こさないとしても

この新型コロナで世界全体の人びとが

その経済が揺らいでいる

この時だからこそ

さらなる感染症拡大は

何としても

食い止めなくてはなりません。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。