新型コロナウイルス感染症が変えた医療に対する考え方
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この新型コロナ第7波が吹き荒れる中で旧態依然とした医療を続けることへの疑問、感染リスクを高め感染拡大を助長することへの危惧が湧いてきました。
そこで以下の5つの点について私的な考えを述べてみたいと思います。
専門医への紹介の必要性
生活習慣病患者への指導
高齢者施設入所者の診療
少人数・予約制・常連客
新患用のオンライン診療
本日はまず、この数年で変わった「専門医への紹介の必要性」について、わたしの経験を書きます。
専門医への紹介の必要性
クリニック開設当初、患者のためになると思い、わたしの専門外の所見があれば取り組んでいたことです。わたしが勤務しているのは高齢者用マンションの建物内にある小さなクリニックであり、当時のわたしはいつも患者がもっと設備の整った総合病院などで詳しく検査・治療を受けたいと願っているのだと思っていました。実際、開設当初の診療対象者は一部の人に限られており、自由診療でできる限りの検査をして異常があれば紹介するというコンセンプトでしたので、これも仕方ないことでした。
ところが新型コロナウイルス感染が全国に広がり、ワクチン接種を受けにクリニック周囲から人が集まるようになると、状況は一変しました。
まず新型コロナウイルス感染のリスクを回避したいがため、多くの患者が集まるような病院には行きたくないというのです。そして同じ一箇所のクリニックで全ての検査・治療をできるだけ受けたいとおっしゃいます。以前の医師は、他の専門医に紹介ばかりするので嫌だったと。
わたしは、その患者からの声で眼が覚めました。これまで、あまり考えることなく、患者が望んでいるものだと思い込んで、より大きな病院へ紹介し、さらに処方箋も全て院外処方の形(つまり別の薬局まで処方箋を持参して薬を購入する方法)をとっていたからです。
それは、今の状況であれば、患者の貴重な時間とお金を、他院や薬局への交通、到着後の手続き・待ち時間、新たな支払い、そして他の多くの人びとと空間を共有することによる新型コロナウイルス感染リスクという、多くの苦難(負担、ストレス、危険)を与えてしまうことになるのです。
そこでわたしは、また新たに医師としての勉強をやり直すことにしました(もう30年ぶりの学びなおしです)。できるだけ多くの疾患を自身で診断・治療し、それでも難しいような患者だけを、最適なタイミングで、その信頼できる専門医に紹介するようにしました。このためには総合内科専門医としての知識が重要であり、来月まさにその試験です(まあ今年は落ちたとしても、勉強したことは実践に役立つこと間違いなしなのですが...)。
このわたしが医師となってからの30数年の間に、医学は格段に進歩し、患者にとって有益なガイドラインに従い、面白いくらいに適切な治療できるようになっています。
また、他ではわずか数分しか医師に診察してもらえなかった患者にとって、その何十倍も時間を割いて耳を傾け、熱く語る(後日「生活習慣病患者への指導」で紹介します)わたしの診療スタイルが、実際に成果につながり、受けているようです。
そして、かかりつけ患者に対して院内処方も始めました。このことにより、感染リスクの軽減だけでなく、支払いや時間など患者負担の軽減にも取り組んでいます。
このようにして、高血圧症や高脂血症はもちろん、呼吸器疾患や他の病院ではなかなかコントロールできていなかった何人もの糖尿病患者のHbA1cが苦もなく正常化し、クリニックに足を運んでくれる人が日に日に増えているのです。
トルストイは言いました「他人の幸福の中にこそ自分の幸福があるのだ」と。
天職に恵まれたわたしにとっても、ありがたいことです。