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院長日記

ナドプラ(NAD+)生活をはじめましょう NAD+産生(合成)その4:ナイアシン④

武本 重毅

ナイアシン(ビタミンB3)

生鮮食品中では、たらこ、かつおなどの魚やレバー、らっかせいなどに含まれており

主にピリジンヌクレオチドである

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)ならびにNADリン酸(NADP)の形で存在しますが

食品が調理および加工されると

ピリジンヌクレオチド (NAD および NADP) が分解され、それぞれ

動物性食品ではニコチン酸アミド(ニコチンアミド)(Nicotinamide:NAM)

植物性食品ではニコチン酸(Nicotinic acid:NA)になります。

生野菜や刺身など生の細胞を食べる食品の場合は

ピリジンヌクレオチド(NADNADP)は消化管内で分解されてNAMになります。

NAMNA小腸から吸収されます。

食品により分解率や吸収率が異なりますが

日本で一般的に食べられている食事中のナイアシンの利用効率は約60%と推定されています。

NAMNA

体内でピリジンヌクレオチド(NADNADP)に生合成された後

脱水素酵素の補酵素として糖質、脂質、タンパク質の代謝エネルギー産生に関与しています。

そして補酵素として

脂肪酸やステロイドホルモンの生合成

ATP産生

DNAの修復や合成

細胞分化など

幅広い反応に関与しています。

 

ナイアシンは水溶性ビタミンですが

NAM(Nicotinamide)は1型糖尿病の治療薬として

NA(Nicotinic acid)は脂質異常症(高脂血症)の治療薬として使われることがあります。

また大量摂取した際の副作用として

消化不良、重篤な下痢、便秘、肝機能低下、劇症肝炎など

消化器系や肝臓に障害が生じた例が報告されています。

 

粘膜や皮膚を健康に保つ効果

ナイアシンNADに変化すると

体内のほかの物質と結びつきNADリン酸(NADP)となります。

NADPは、主に脂肪酸が合成されるときに水素を供給する役割を持っています。

そのほかNADP

DNAやホルモンをつくることにも関わっています。

ホルモンでは特に、性ホルモンを作る手助けをして正常な発育を促進します。

この働きによって細胞の生まれ変わりをサポートしており

特に生まれ変わりの活発な皮膚の粘膜の健康維持に役立ちます。

乳児のアトピー性湿疹

母親の年齢、教育、喫煙、環境要因などと関連していると言われていますが

妊娠中の母親の食事とも関連していることが示されています。

天然に存在する栄養素であるナイアシンNAMトリプトファンを食事からとることで

NADが体内で維持されるので

アトピー性湿疹を含む皮膚疾患の治療に使用されています。

二日酔いを防ぐ効果

ナイアシンは、二日酔いを防ぐはたらきがあります。

お酒のアルコール分は腸で吸収され、血液によって肝臓に運ばれます。

肝臓でアルコールアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解され

さらにアセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸に分解・解毒されます。

その時に働くアルコール分解酵素も、 NADを補酵素として使用しています。

お酒をたくさん飲んだ時ほどナイアシンが消費されるため

ナイアシンが不足すると

体内にアセトアルデヒドが残り、結果 二日酔いや、頭痛・吐き気などの原因となります。

血行を促進する効果

ナイアシン毛細血管を広げる作用があるため

血行がよくなり冷え・肩こり・頭痛を改善し

脳神経のはたらきをよくします。

また医薬的に大量にナイアシンを投与することで

血液中のコレステロールや中性脂肪を減らし

動脈硬化などの脂質異常症を防ぐはたらきもあります。

悪玉コレステロール (LDL)値を低下させ、脂質の代謝を改善します。

このとき善玉コレステロール (HDL)値が低下しないことが特徴です。

ただしナイアシンはインスリンの合成に関与しており、糖尿病の場合には注意が必要です。

 

認知症予防

食事から摂取するナイアシンの量とアルツハイマー病の罹患率を調査したところ

ナイアシンの摂取量が多いほど

アルツハイマー病にかかりにくいという結果が得られました。

ナイアシンアルツハイマー病の予防に重要な役割を果たすと考えられています。

 

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。