最近のNMNヒト臨床試験まとめ 2:高齢者男性の運動機能改善と聴力改善
今回ご紹介するのは東京大学附属病院からの報告です。
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド) 250mgを12週間という短期間内服しただけで
効果が出ることに驚きました。
NMNヒト臨床試験 その4
慢性的なニコチンアミドモノヌクレオチドの摂取は、血中ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドレベルを上昇させ、健康な年配の男性の筋肉機能を変化させる
npj Aging. 2022; 8:5
東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科の
五十嵐正樹助教、中川佳子医師、三浦雅臣医師、山内敏正教授の研究グループは
健常な高齢男性を被験者として
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の前駆体である
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を経口摂取した場合に
筋力低下を始めとした老化現象に与える影響についての
無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を行いました。
健常な高齢男性に1 日あたり250 mg のNMNを12 週間経口摂取すると
NAD+および関連代謝物の血中濃度が上昇し
歩行速度、握力などの運動機能が改善することを明らかにしました。
さらに、NMNの経口摂取により
聴力の改善傾向がみられることも分かりました。
日本が直面している超高齢化社会ではサルコペニアの予防が大きな課題とされています。
今回の研究結果から、NMNの経口摂取によるサルコペニアの予防効果が期待され
今後、健康寿命の延伸へ寄与するものと考えられました。
この研究ではまず
NMNを高齢男性へ投与したときの安全性と
NMN摂取によって
老化制御に深く関わる補酵素であるNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が
マウスによる実験と同じように増えるかどうか調べられました。
高齢男性にNMNを12週間摂取してもらった結果
特に有害事象はなく、安全性が確認されました。
また、NMN摂取群では
血液中のNAD+が、12週間でプラセボ群(対照群)の2倍以上に増加しました。
体内のNAD+は加齢と共に減少します。
老化や糖尿病、心血管疾患、がん、アルツハイマー型認知症など加齢に伴う病気の発症には
NAD+の減少が密接に関わっています。
NMNは体内に入るとすぐにNAD+に変換され
老化を制御する酵素のサーチュインを活性化します。
サーチュインは長寿遺伝子とも呼ばれ
この酵素を活性化させることが老化を遅らせることにつながるといわれています。
このためNMN摂取などによって血液中のNAD+を増やすことが
老化制御のカギを握ると考えられます。
さらに、この研究の成果として最も注目されるのは
運動機能を見る指標である「歩行速度」「握力」「30秒椅子立ち上がりテスト」の数値が
NMN摂取群で有意に改善したことです。
プラセボ群では、これらの数値にほとんど変化がみられませんでした。
歩行速度と握力は
進行すると介護が必要になるサルコペニア(筋肉減少症)の診断基準にも使われる指標です。
NMNの摂取によって歩行速度や握力が改善し
サルコペニアが予防できる可能性が出てきました。
もう1つ注目されるのが
NMN摂取群で「聴力」に改善傾向がみられた点です。
聴力が衰えると
人とのコミュニケーションに影響し
生活の質を大きく低下させ
認知症になるリスクも高まります。
NMNによる目の機能の改善はマウスによる研究で報告されていますが
聴力改善は、これまであまり注目されていませんでした。
したがって、継続的な経口 NMN 補給は
人間の加齢に伴うサルコペニア(筋肉減少症)を予防するための
効率的な NAD+ ブースターになる可能性があります。