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院長日記

血液の異常と関係する比較的新しいウイルス感染症

武本 重毅

2000 年代に入り、重症肺炎を引きおこす3種類の新しいコロナウイルスが出現しました。

とくに2019年に中国湖北省武漢市でみつかった新型コロナウイルスCOVID-19)は、わずか数か月のうちに世界中に拡大しました。

感染者の累計は6億5千万人をこえ、死亡者数も688万人に達し、日本でも第9波が襲い、なお増加中です。

新型コロナウイルスのように、これまで知られていなかった病原体が出現すると、従来の対応では抑え込むことができず、医療のみならず社会全体に重大な影響を与えることがあります。

こうした新しい感染症は、それ以前に知られていた感染症に対比させて新興感染症とよばれます。

これらの中で血液疾患と関係するウイルスについて順にご紹介しましょう。

ウイルスによる造血抑制がヒトパルボウイルスB19 parvovirus B19などでみられます。ヒトパルボウイルスB19伝染性紅斑(リンゴ病)をおこすウイルスですが、成人では急激な骨髄抑制や赤芽球癆をおこします。

ヒトTリンパ球向性ウイルス1 human T-lymphotropic virus 1(HTLV-1)により成人T細胞白血病リンパ腫 adult T-cell leukemia lymphoma(ATL/ATLL)を発症します。わが国では、とくに九州や四国を中心とする西南地方に多く、このウイルスは母乳による母子間(垂直感染)、夫婦間(水平感染)、輸血などで感染します。ウイルス感染者がすべて発症することはなく、わが国では約100 万人のHTLV-1キャリアのうち発症するのは3%とされています。

HTLV-2ヘアリー細胞白血病のネイティブ・アメリカンから分離されました。

後天性免疫不全症候群(エイズAIDS〕)の原因が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)です。当初わが国では、血友病患者が非加熱血液製剤を介してHIVに感染することが多かったのですが、近年は、性行為による感染が最も多く、患者の多くは男性の同性愛者です。これまでわが国では3万人超のHIV感染者・エイズ患者が報告されています(2021年)。また、毎年1,000人近くの新規感染者が診断されています。未診断の感染者も多いと考えられ、実際にはさらに多くの感染者がわが国にいるかもしれません。

胃のMALTリンパ腫 extranodal marginal zone B-cell lymphoma はその発症、進展にヘリコバクター – ピロリの関与が考えられており、除菌療法が効果を示すことがあります。またヘリコバクター – ピロリ陽性の特発性血小板減少性紫斑病 idiopathic thrombocytopenic purpura(ITP)患者治療の第一選択は除菌療法です。

骨髄中のマクロファージ・組織球が増殖し、みずからの血球を食べている(貪食する)血球貪食症候群という疾患があります。本症は、悪性リンパ腫や膠原病に伴う場合と、さまざまなウイルス感染によって引きおこされる場合があります。原因となるウイルスにはEBウイルスサイトメガロウイルス単純ヘルペスウイルスなどがあり、ウイルスで引きおこされる血球貪食症をVAHS(virus associated hemophagocytic syndrome)といいます。

マダニの媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に注意する必要があります。発病すると高熱、嘔吐、下痢などの症状が現れ、血小板や白血球が減少し、重症化すると死亡することがあります。わが国では2005年から2014年9月4日まで96名(死亡30名)のSFTS患者が報告されています。患者は15の県(兵庫、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島)から報告されており、今のところ発生地域は西日本です。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。