人生100年時代、私たちが目指す120年その⑤:不整脈
最近、不整脈の患者さんが目につくようになりました。
その共通点としては、仕事に対するストレス、そして喫煙でしょうか。
皆さんストレスを理由に禁煙することができません。
不整脈の中でも高齢者の皆さんを診療していて、その多くは心房細動のようです。
脳梗塞の予防が必要になります。
最近の院長日記でご紹介したように私たちが健康寿命120歳を目指して100歳あたりで克服しなければならないのが心不全でした。その原因のひとつが不整脈です。
しかし何故、高齢になると心房細動の患者さんが多くみられるのでしょうか。
そこで今回は
2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドラインより
心房細動の長期的な発症リスクを低下させるか、または発症を遅らせる可能性のある因子(修正可能な危険因子)についてご紹介してみましょう。
①高血圧
高血圧はもっとも広く受け入れられている心房細動の危険因子です。
心房細動症例の 56.5% は、1つ以上の危険因子を有しており、そのうちの高血圧がもっとも重要な因子であったと報告されています。また、持続的に上昇した収縮期血圧、ならびにより長期の降圧治療歴などが心房細動の新規発症リスク増加と関連していると報告されています。
日本人を対象とした脳・心血管疾患の都市型コホート研究では、心房細動における収縮期血圧の関与は過体重でさらに上昇すると報告されています。
②糖尿病
耐糖能障害を有する試験集団において、空腹時血糖値が18 mg/dL 増加するごとに心房細動発症リスクが33% 増加するという報告があります。しかし、心房細動と糖尿病との明確な関連は示唆するエビデンスは少ない状況です。
③肥満
肥満と心房細動との関連を示唆する報告は近年増加しています。
肥満患者は増加傾向であり、肥満指数(BMI)の上昇は心房細動と有意な関連が認められています。重要な点は、修正可能な危険因子の中で、心房細動の生涯リスクに影響を及ぼすもっとも顕著な危険因子は肥満なのです。また、BMIの10年間の変動と心房細動との関連を検討した研究では、男女ともに、BMIが低下すると心房細動リスクが減少し、BMIが上昇すると心房細動リスクの増加が認められています。
④睡眠呼吸障害
睡眠呼吸障害と心房細動リスクとの関連を示唆する報告が近年増加しています。
メタ解析の結果から睡眠呼吸障害は心房細動リスクを高める可能性があり、その重症度が高いほど心房細動リスクが高くなることが認められています。
睡眠呼吸障害は、その低酸素状態により、身体の中の大事な臓器に影響を与えているようです。ですから睡眠時の持続的陽圧呼吸(CPAP)により外気を強制的に送り込み、呼吸を安定化させることが必要になります。
⑤尿酸
心房細動と尿酸との関連を明確に示唆するエビデンスは少ないのですが
わが国の単一保健センターで行われた横断研究では、血清尿酸レベルは男性および女性の両方において、他の心臓血管危険因子とは独立して心房細動有病率と有意に関連していました。
また、わが国の単一病院で定期健康診断を受け高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、および高尿酸血症または痛風と診断され、尿酸降下薬を内服していない日本人を対象に行われた後ろ向き研究の結果では、心房細動に対し高尿酸血症は独立危険因子でした。
⑥喫煙
心房細動に対し,喫煙は関連する危険因子として知られています。
また、心房細動を患う喫煙者の入院と死亡のリスクが高いと報告されています。
わが国の単一病院における入院患者を対象とした心房細動と喫煙およびタバコ全消費量との関連を検討した約2年間の前向き研究では、現在の喫煙者および喫煙指数≧ 800の喫煙者は、他の因子とは独立して心房細動新規発症と関連していました。心房細動を予防するためには喫煙の中止の重要性が示唆されています。
⑦アルコール消費量
アルコール消費量の増加とともに心房細動リスクが増加することが示されています。
1日のアルコール摂取量が10 g増えるごとに心房細動新規発症リスクが5%上昇することが報告されています。
わたしの知っている高齢者男性は、心房細動に対してアブレーション治療を受けた後も発作が起こっていましたが、最後は禁酒することで完治したそうです。