Director's blog
院長日記

聚楽内科クリニック2023年を振り返って

今年はアンチエイジング治療に携わる者として、画期的な一年になりました。


まず今年初めに出版された総説、これはある意味、医学の集大成とも言える論文です。

人はなぜ生きていられるのか、なぜ病気になるのか、なぜ老化が進むのか、そしてなぜ命に限りがあるのかという疑問に対して、遺伝子レベル、分子レベル、細胞(ミトコンドリア)レベルから解き明かしてくれています。この論文の凄いところは、そのほとんどすべての原因に対して対処法(治療法)まで研究していることです。つまり、この論文に載っていることを全て理解し、医療者として実行できれば、不老不死も夢ではなくなるのです。

次に私たちのクリニックでご提供しているアンチエイジング3本の矢のひとつ、水素ガス吸入療法です。

今年の初めにNHKニュースで取り上げられた、国内15施設が参加した多施設共同二重盲検無作為化比較試験の結果はたいへん興味深いものでした。病院外で心停止になり心肺蘇生で心臓の拍動は回復したものの意識が回復しない状態で2%水素添加酸素吸入(水素吸入療法)をおこなうと、死亡率が下がり意識が回復して後遺症を残さずに社会復帰する可能性を高めることが示されました。

3つ目はわたしが「統合医療でがんに克つ」の9月号に投稿した、ミトコンドリアの機能回復によるアンチエイジング治療への応用です。

ミトコンドリアは、細胞内の最も基本的なエネルギー変換プロセスにおいて極めて重要な役割を果たしているため、生命にとって不可欠です。ミトコンドリアの機能不全は、老化加齢に関連した病気がんと関連していることが知られています。

ミトコンドリアの酸化代謝産物は反応性が高く不安定な酸素であり、多くの分子を酸化して活性酸素種を形成する可能性があります。活性酸素種および脂質過酸化生成物は、ゲノムDNAとミトコンドリアDNAの両方に影響を及ぼし、さまざまな種類のDNA損傷を引き起こす可能性があります。酸化的DNA損傷は、老化加齢に関連した病気がん発症にとって最も危険な障害であると考えられます。そのため、ミトコンドリアの機能改善によるアンチエイジング治療の効果が期待されます。

4つ目は当院で最初に始めていたアンチエイジングの3本の矢の第一の矢、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を用いる治療です。

これはミトコンドリアのエネルギー産生亢進とサーチュインタンパクによる修復により、「老化予防(若返り)」「代謝亢進」「循環器機能改善」「記憶力向上」「免疫機能回復」など様々な効果を実感することができます。

そして最後に、最近新たに注目を集めている細胞間情報伝達物質であるエクソソーム、その最も若いウォートン ジェリー(WJ)から分泌されるWJエクソソームを用いるアンチエイジング3本の矢の第三の矢です。

最近の研究では、エクソソーム細胞間通信を行う際に特定の情報成分を運ぶことが示されており、その中には細胞の再生や修復を促進する可能性のある成分が含まれていることがあります。これにより、アンチエイジング治療再生医療の分野での応用が期待されています。

ある研究グループは、老齢のマウスに若いマウスの血を注射しました。そして若い血液が流入することで、筋肉が強化され、脳の炎症が減少するなど、あらゆる健康改善がもたらされることに気づきました。若いマウスの血が老齢のマウスの生物学的時計を戻すのを助けていたようなのでした。

臍帯由来のエクソソームに関する研究は、アンチエイジング治療の可能性を探る興味深い分野です。臍帯から採取されるエクソソームには、細胞の成長再生修復を促進する可能性がある成分が含まれています。私たちが治療に用いているヒトのウォートンジェリー組織は、まさに臍帯由来のエクソソームの魅力的な供給源です。

私たちのクリニックでは、健康寿命120年を掲げて、アンチエイジング3本の矢を皆様に提供していますが、医学の世界ではもう既に「年齢逆転」や「不老不死」実現に向けての努力が始まっています。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。