Director's blog
院長日記

私が老化研究に没頭し、そして現在アンチエイジング治療に取り組む理由

武本 重毅

わたしが今の診療スタイルになったのには、理由があります。

来月出版される私の新書(老化は「治る」)の中から引用しながら書いてみました。

米国から帰国した後も既存の概念にとらわれずに研究を続けていく中で、私はある重大なことに気づきました。

成人T細胞白血病の患者さんは、ウイルス感染したことで細胞が老化し、それによって治療が効きにくくなっているのではないか、ということです。

私はこのアイデアをまとめて、雑誌『Cell(セル)』に送りました。

『Cell』は、『Nature(ネイチャー)』『Science(サイエンス)』に並ぶ、世界的に最も有名な雑誌の一つです。ここに論文が掲載されたならば、「教授の席が約束される」といわれるほどの超一流雑誌です。

この雑誌が、「老化と病気」というワークショップをイタリア🇮🇹トスカーナで開くというので、私のアイデアを送ってみたのです。

すると、嬉しいことに、このワークショップでポスター発表する機会に恵まれました。このワークショップは『Cell』が初めて行った老化についての学会で、世界各地から約100人もの研究者が集まりました。

トスカーナは、「万能の人」と称されるレオナルド・ダ・ヴィンチの故郷。医学の発展の礎を築いた偉人の故郷で行われる学会に参加できる喜びは格別でした。

そのワークショップに参加していたのが、世界中のエイジングケア(老化対策)の研究者たちだったのです。彼らは、「老化を何とかしよう」と志す熱意ある研究者たちでした。この人々によって大きな変化が引き起こされることになるのでした。

このトスカーナでのワークショップを起因に、世界中で老化の研究がいっきに加速しました。

そして、2013年、雑誌『Cell』に「老化に関わる9の特徴」が紹介されました。

さらに10年後の2023年(昨年)、そこに3つが追加され、同じく雑誌『Cell』に「老化に関わる12の特徴」が発表されたのでした。

この論文を見て、私の心の中に閉じ込められていた何かが一気に噴き出しました。

奇しくも新型コロナウイルスパンデミックの中、私たちのクリニックには、感染予防して欲しいと本当にたくさんの患者さんたちが押し寄せてきていました。私は皆さんの熱意に動かされ、医学書を学び直して、ウイルス感染重症化と老化との関係を改めて確信しながら、再度老化を何とかしなければならないと動き始めていたときでした。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。