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院長日記

酸素の毒性:有害な酸素環境下で生存するための進化⑩ 最終回

再生医療

ほとんどの幹細胞は体内の低酸素ニッチに存在します。

重度の低酸素症は胎児心筋細胞の増殖を引き起こし、成体哺乳類の心筋細胞が細胞周期停止状態から脱出することを可能にすることも示されています。

低酸素心筋細胞は増殖性新生児心筋細胞の特徴を示し、酸化DNA損傷に対する感受性が低くなります。

低酸素状態が幹細胞ニッチや休止細胞を活性化するメカニズムについてはさらなる研究が必要ですが、加齢老化組織損傷に関連するヒトの疾患に広く応用できる可能性があります。

結論

酸素は生命にとって不可欠であると同時に有毒です。

低酸素症は両刃の剣であり、細胞、組織、全身レベルで有害な影響と有益な影響を及ぼします。

すべての組織、病状、個人には最適な酸素設定値があります。酸素の供給と需要の不一致によりこの設定値が乱れ、病状を引き起こす可能性があります。

酸素研究の展望は明るく、

神経疾患

心血管疾患

ミトコンドリア機能不全

ドーパミン作動性神経変性

異常な低酸素シグナル伝達によって引き起こされる悪性腫瘍

老化の治療の手がかりが見つかるかもしれません。

 

いかがでしたか?

酸素が持つ「毒」と、それを克服してきた生物の進化の物語。

私たちが当たり前のように吸っている空気には、こんなにもドラマチックな歴史が隠されているのです。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。