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院長日記

有子曰く、信義(しんぎ)に近づけば、言(こと)復(ふ)むべきなり。恭礼(きょうれい)に近づけば、恥辱(ちじょく)に遠ざかるなり。因(いん)もその親(しん)を失わざれば、また宗(そう)とすべきなり。 論語【学而篇】

武本 重毅

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「他人と約束したことがすべて道理にかなっていれば履行できるが、もし道理にはずれた約束ならば、実行不可能である。人を敬ってすべて節度ある礼儀にかなっていれば最上で、恥辱を受けることはない。しかし、度を過してぺこぺこすれば、かえって相手からあなどられたりする。
 姻戚に対してもこれを節度をもって交際すれば近親でなくても、近親同様に信頼し合えるものだ。もし姻戚に対して親しみ方を間違えてしまえば、相手からあなどられ、さまざまな困難を生じる」
 人と約束する場合、それがやってよいことか、はたして実行可能なことかを熟考することである。もしやって悪いこと、不可能なことならば、けっしてこれを実行することはできない。嘘つきになってしまう。無理にこれを実行すれば人道に背き法律を犯すことにもなろう。人は敬っても度をすごさないことが大切なのである。そうしないと、かえって人から軽蔑されてしまう。
(渋沢栄一「論語」の読み方、竹内均編・解説)

 不動産などの契約ごとも注意が必要である。銀行からローンを組み、賃貸契約を交わし始めてはみたものの、その先に支払わなければならない固定資産税や取得税のことまで十分な説明を受けていなければ、面食らってしまう。そこで実行不可能であることに気づく。売る方は契約してしまえば後は安泰かもしれないが、買う方はそこから苦労が始まる。そんなビジネスをやっていれば遅かれ早かれ不可能な事業であることを知ることになるだろう。

 ビジネスを始めるにあたり、そのプロジェクトは多くの専門家の意見を聞き協力し合いながら進めるべきであり、その計画は綿密なものでなければならない。そして何よりも相手に対して不利な条件とならないようにしなければならない。もちろんこちらにも利益が入るような形を整える必要はあるが。お互いに無理がなく、長続きするようなプロジェクトこそが最高である。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。