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院長日記

水素吸入療法 その17:がん治療症例論文④⑤

武本 重毅

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次はがん患者さんへの効果です。

がん患者では抗腫瘍免疫が低下しており、このため十分な治療効果を得ることができません。

そのCD8+ T細胞の免疫活性の喪失は、ミトコンドリア機能不全による可能性があり、

水素(H2はその抗腫瘍免疫を回復させるために重要な役割を果たしていることがわかりました。

水素(H2)吸入療法とニボルマブ(オプジーボ)の併用療法で治療された大腸癌患者は、ニボルマブ単独で治療された患者よりも有意に長い全生存期間を示しました。

肺がんは最も一般的なタイプの腫瘍であり、

対側肺、骨、脳に転移しやすいといわれています。

2015年11月に多発転移を伴う肺がんと診断された44歳の女性についての症例報告です。

脳転移の除去後に経口分子標的薬が開始され、ほとんどの病変は28か月間安定していました。

2018年3月、頭蓋内多発転移、第三脳室と側脳室の水頭症、骨、副腎、肝臓への転移が認められました。

その1か月後、腫瘍を制御するために水素ガス単独療法が開始されました。

すると4か月後、多発脳腫瘍のサイズが大幅に縮小し、第三脳室と側脳室の水頭症は大幅に減少しました。

そして1年後、すべての脳腫瘍は消失し、肝臓と肺への転移には大きな変化はみられませんでした。

これらのことから、標準的な治療が失敗した後、

水素ガス単独療法によって腫瘍(特に脳腫瘍)が著しく効果的に制御され、生存期間が延長したと考えられました。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。