ヘムとポルフィリン 11:遊離ヘムの除去
遊離ヘムは、活性酸素種(ROS)が生成されるフェントン反応に関与する第一鉄(Fe2+)の豊富な供給源です。
遊離ヘムは細胞に対して極めて有毒です。
実際、ヘムは
(i)生体膜に挿入されて脂質二重層を変化
(ii)炎症誘発性が強く、白血球、血小板、赤血球(RBC)の血管内皮への動員を誘導
(iii)低密度リポタンパク質(LDL)を酸化
(iv)一酸化窒素を不活性化して血管機能を損傷
さらに、遊離ヘムからのフェントン反応によって生成されるROSは、
(i)脂質膜、タンパク質、核酸を損傷
(ii)細胞シグナル伝達経路と酸化剤感受性炎症誘発性転写因子を活性化
(iii)タンパク質発現の変化
(iv)膜チャネルの混乱
これらすべての出来事は細胞死を促進します。
ヘモグロビン(Hb)は通常、赤血球に限定されていますが、
赤血球外 Hbおよび血漿中の遊離ヘムのレベルは、
通常であれば、老化赤血球の破壊および赤芽球の脱核中に発生する血管内溶血に関連するくらいの低いものと考えられます。
遊離ヘムは細胞外毒性を持つ可能性があるため、
細胞の恒常性を維持し、病的状態を回避するために、その濃度は厳密に制御されています。
この目的のために、哺乳類は、
Hbに対してハプトグロビン(Hp)
遊離ヘムに対しては
高比重リポタンパク質(HDL)、低比重リポタンパク質(LDL)、ヘモペキシン(Hx)、およびヒト血清アルブミン(HSA)を用いるシステムを発達させてきました。
赤血球の生理的ターンオーバー中に、血漿中に放出された遊離細胞外Hbのごく一部(約10%)が
Hpに捕捉され、肝臓と脾臓にあるマクロファージ(網内系)に輸送されます。
次に、Hp:Hb複合体はHpスカベンジャー受容体(CD163)に捕捉され、細胞内に取り込まれます。
RBCの貪食または Hpを介した Hbの細胞内取り込みに続いて、Hbは分解され、ヘムは新規赤血球生成のためにリサイクルされるか、または異化(分解)されます。